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Review: 坂 茂 『建築の考え方と作り方』 @ 水戸芸術館現代美術ギャラリー+水戸芸術館敷地内 (建築展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/03/16
水戸芸術館現代美術ギャラリー+水戸芸術館敷地内
2013/03/02-05/12 (月休;4/29,5/6開;4/30,5/7休), 9:30-18:00.

「安普請のアパートより良い」と話題になった女川町の多層コンテナ仮設住宅をはじめ、 東日本大地震 津波 支援プロジェクト など、地震や紛争の難民向けの活動も目覚ましい 坂 茂 の回顧展。 東日本大震災後のプロジェクトを展覧会でまとめて観てみたいと、期待していた展覧会だ。 もちろん、紙の家などそれ以外の商業施設・公共施設や住宅のプロジェクトもちゃんと取り上げた、 仕事の全貌がわかる展覧会だ。

やはり、一番の見所は紙管を使った建築に関する展示。 全体に占める割合も最も大きく、また展示の空間構成の一部としても使われていた。 紙の建築については1990年代から知っていたものの、 今まで円柱状の紙筒を使ったものしか観たこと無かったのだが、 入口の「紙の茶室」 (2008) は四角柱状の紙筒を使ったもの。 円柱状のものより肉がかなり薄いものを使っていたのが意外だったのだが、 角材のように面状に積むことができるので、それで強度が担保できるのかなあ、と。 また、円柱状の紙筒を構造材として使った建築にしても、 スケール等に合わせてか、さまざまな肉厚を紙筒を使い分けていたのが、印象に残った。

紙の建築は大型なパビリオンの類にしても仮設のものが多かったが、 大型の商業施設から個人宅まで仮設ではない建築作品の展示もあった。 大きな開口部やピクチャウインドウ、ガラスのシャッター等を駆使した 開放的な建築の展示もまとまっていたし、 Centre Ponpidou Metz や 建設予定の大分県立美術館の木材使いも面白かった。 しかし、巧いなあと感心するのは、やはりプレファブ建築。 無印良品の「家具の家」 を手掛けていたのは知っていたが、 このような家具を構造材として使う家を他にもいろいろ手かげており、 家具職人が仕上げたような高級家具を構造材に使った邸宅もあるのか、と。

そして、もちろん女川町仮設住宅の実寸模型も ギャラリー内ではなく水戸芸術館の中庭に誰でも入れるように展示されていた。 実際に入ってみると、ディテールに仮設ぽさを感じたけれども、 プレファブの倉庫を流用したような仮設住宅に比べたら遥かに快適そう。 阪神大震災の際の紙のログハウスから格段に進化しているなあ、と感心。

空間構成というより、 紙管や大量生産品である家具、コンテナの類をディテールだけでなく構造としても使うのが巧く、 そしてその得意な面がうまく難民支援といった活動にはまったのだな、 と、そんなことを改めて思った展覧会だった。