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Review: 『アジアをつなぐ——境界を生きる女たち 1984-2012』 @ 栃木県立美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/03/22
『アジアをつなぐ——境界を生きる女たち 1984-2012』
栃木県立美術館
2013/01/26-03/24 (月休;2/11開;2/12,3/21休), 9:30-17:00.

開館40周年記念企画として開催されているアジアの女性作家を集めた展覧会。 昔に観た『揺れる女 / 揺らぐイメージ - フェミニズムの誕生から現代まで』 (1997) を思い出させるフェミニズム色濃い展覧会ではあるのだけれども、 アジアといっても東アジア、東南アジア及び南アジアを含む広い範囲の それも欧米に拠点を移して制作をしているアジア系の作家も含めて集めたせいか、 技法にしても主題にしても無理やり一つに押し込めてしまっているよう。 文化的な背景はもちろん経済レベル等の違いなどを押しやって 女性の問題としてしまうことの無理を感じてしまった。 といっても、なかなか見る機会の無いアジアの作家をまとめて観ることができ、 個々の作家の中にはフェミニズム云々の文脈とは別に面白く感じられるものもあった。

大きな人物像から転がり出るような白い糸玉の 林 天苗 [Lin TianMiao] 『卵 #3』 (2001) や 割れた壺の陶器片を大きな泡の塊のように金継した 李 受俓 [Yee SooKyong] 『翻訳された壺』 (2009) の 有機的な形状と偏執的な手作業を想起させる作りも良かった、 曹 斐 [Cao Fei] 『影夢人生』 (2011) の手影絵の映像作品の洗練された表現が印象的。 ミニマルな中にナラティブなものを忍ばせるエッチング作品 Zarina Hashmi 『多くの部屋にある家』 (1993) も良かったが、 少々シュールなフォトコラージュで物語る Yee I-Lann 『スールー諸島の物語』 (2005) も良かった。 2000年代に入って、洗練された現代的な表現も世界的に根付きつつあるのだなあ、と。

日本の作家では、以前にも観たことあるけれども、 塩田 千春 のパフォーマンスを捉えたビデオ作品はやはり見入ってしまうものがあった。 不安定な一瞬を固定したような立体作品 坂田 清子 『とまったカーテン』 (2010) や、 ビデオ投影、ライトボックスの写真や塩で描いた床のパターンを組み合わせたインスタレーション 井上 廣子 『Mori: 森』 (2011-12) も、スタイリッシュで印象に残った。