明治から昭和戦前にかけて活動した演歌師 添田唖蝉坊 と その息子で演歌師から戦後は文筆業へ転身した 添田 知道 の仕事を辿る展覧会です。 知道の甥 入方 宏 氏からの寄贈による「添田唖蝉坊・知道文庫」をもとに構成したものです。 演歌といっても1960年代以降のそれとは別物の、 明治初期の自由民権運動の演説 (壮士演歌) をルーツに持ち、 昭和に入って「流行歌」の登場に伴い廃れたジャンルです。
添田 唖蝉坊 の歌は ソウルフラワーユニオン などのカバー等を通して知っていましたし、 黒岩 比佐子 『パンとペン——社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』 (講談社, 2010) などで音楽以外の背景を伺う知る機会はありましたが、まとまって追ったのは初めて。 当時の彼らの資料だけではなく、添田 の演歌を取り上げる1960年代以降のミュージシャンの活動にも触れられおり、勉強になりました。 展示の歌詞に「美しき天然」の節でのような注のある曲が数曲あり、 こういう演歌を通してこのメロディが広まったのだろうなあ、とか。 しかし、ひょっとしたら当時の 唖蝉坊 の録音が聴かれるのではないかと期待していたので、それが無かったのは残念。 知道 のものは聴くことができましたが。 レコードによる「流行歌」に替わられて廃れたジャンルだっただけに、 やっぱりSP盤にも残っていなかったのでしょうか。