TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Francis Bacon 『フランシス・ベーコン展』 @ 東京国立近代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/04/21
東京国立近代美術館
2013/03/08-05/26 (月休; 3/25,4/1,4/8,4/29,5/6開; 5/7休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00).

戦後1940年代半ばから亡くなる1992年まで活動したイギリスの画家 Francis Bacon の回顧展。 今までも作品を観たことがあるけれども、 この時期の美術作家にしてはオーソドックスな画家という印象が強く、 さほど興味は持てずにいた。 しかし、これだけまとめて観ると、それなりに興味深く観ることができた。 特に、Becon に影響を受けたという 土方 巽 の舞踏や William Forsythe のダンスの映像が 一緒に展示されていたことが鍵となり、 なるほどダンスで身体のポーズや動きを楽しむように観ればいいのか、と気付かされた。

以前から薄々感じていたのだけど、通してみると、やはり肖像画・人物画の人だったのだな、と。 例外的ともいえる主要作品 Sphinx 連作にしても、 上半身に人物の肖像的な面が含まれていた。 あと、前半と後半では作風が大きく異なっていたことにも気付かされた。 前半1950s頃までは表現主義的とでもいうもので、土方 の舞踏はこういう所の影響が大きいのだろう。 David Lynch も影響を受けていると展示パネル解説にあったのが、 前半で観られるような心霊現象 (エクトプラズムやポルターガイスト現象) を思わせる表現に Lynch と共通するものを感じた。

1960s 以降の後半になると、画面の色も明るくなり、 すっきりした背景に歪んだ身体像が浮かび上がるようになる。 身体の歪んだ造形や、そのストロークが作りだす動きも、 前半のような表現的というか心霊的と思わせる面が薄れて、 抽象的な形象と動きの身体による表現のよう。 また、1970年代以降の三幅対は、身体の歪みだけでなく、舞台となる空間の歪みも作り出していた。 展覧会を観るまで Bacon と Forsythe の組合わせを意外に思っていたのだけれど、 Bacon の絶筆を主題にした三枚のスクリーンを使った映像インスタレーション Peter Welz / William Forsythe: “retranslation / final unfinished portrait (francis bacon) / figure inscribing figure / [take 02]” (2005) も、Bacon の身体像を通した歪みと動きの表現の Forsythe ならではの解釈なのだろうと納得させられた。 そして、そういう後半の Bacon の表現の方が、今の自分にすっと入ってくるものがあった。