Teatr Wierszalin は ポーランドの東部国境近いビャウィストク (Białystok) 近郊のスプラシル (Supraśl) で 東欧革命後の1991年に設立された劇団。 1992年に来日していたようですが、その時は全くチェックしていませんでした。 予備知識はほとんどありませんでしたが、「人間が演じる人形劇」という謳い文句もあり、 マイムやフィジカル・シアターのような演出を期待して観に行ってみました。 しかし、身体表現の面白さで見せるような要素は少なめで、むしろセリフ中心に展開する演劇。 字幕があったといえポーランド語のセリフが理解できず、少々厳しいものがありました。
Bruno Schulz の原作は読んだことがありませんが、 原作発表の1933年より後の出来事も多く描かれ、おそらく原作の翻案ではありませんでした。 戦間期から第二次世界大戦にかけてのボドホビチ (Drohobych/Дрогобич, 当時ポーランド/現ウクライナ) を舞台に、 そこで生きたユダヤ系ポーランド人 Bruno Schulz の ソビエト・ロシアとナチス・ドイツに翻弄される不条理を、 マジック・リアリズム的に描いたよう。 「マネキン人形」的なモチーフは戦間期モダニズムの反映とでもいえるもので、 劇中に上映されるサイレント映画の断片 (Luis Buñuel & Salvador Dalí, Un Chien Andalou, Charlie Chaplin: Modern Times, Sergei Eisenstein: Battleship Potemkin, Fritz Lang: Metropolis) も象徴的。 そして、その影というかネガティヴイメージとしての、ナチスとソヴィエト、そしてその間の戦争。 セリフが判らず充分に理解できたとは言い難いですが、そんな時代の雰囲気を感じさせた舞台でした。