ニューヨーク (NY, New York) はブルックリンを拠点に活動するダンス/バーレスク (buresque) のカンパニー The Love Show による、 ロシア・バレエ『くるみ割り人形』 (Tchaikovsky: The Nutcracker, 1892) に基づくショー。 作品やカンパニーの背景・文脈はよく知らなかったけれども、 バレエ、ヒップホップ・ダンスやバーレクスの要素を織り交ぜたショーというとこに惹かれて、観に行った。 写真などから作品をネタにしたバーレスク・ショーを予想していたのだけど、 予想以上に原作を踏まえてちゃんとバレエも踊るショーが楽しめた。
舞台を今現在のNYとして翻案し、主人公の Clara は両親や兄との折り合いの悪い思春期の女の子に、 クリスマスプレゼントはくるみ割り人形ではなくアナログのレコードという設定になっていた。 そして、お菓子の国へ行く代わりにレコードの国、オールドスクール・ヒップホップ全盛の1982年のNYへ。 単に行くだけでなく、そこで若かりし頃の両親や兄 Fritz の過去を知り、 現在に戻って両親や兄と和解する、というストーリーは彼らのオリジナルか。
ハツカネズミと兵隊人形の闘いがドブネズミとNY州保健局 (NYDOH, New York State Department of Health) の闘いだったり、 雪片のワルツが粉 (コカイン) のワルツだったり、その置き換えの妙が面白いだけでなく、 特徴的な動き (コカインの粉を鼻から吸う仕草) を巧くバレエ的な動きにしていた。 過去への旅する第二幕では、1980年代にNYで過ごした人に「あった、あった」と受けるのだろうなあと思われるネタが満載。 Union Square の浮浪者、自転車で出前に走り回る中華街の中国人、Rockefeller Center のリンクでスケートする人々など、 ダンス化するネタ選びも絶妙で、可笑しかった。 もちろん、Spanish Harlem のヒップホップ・ダンスや42番街でのリスクショー (risque show) も。 ネタ選びだけでなく、ダンス、特にバレエの動きも良く、 ナレーションは少しあったもののセリフを使わないダンスだけで充分に観られる舞台だった。
新しい表現を観たという感じではないが、 解りやすいとは言い難いネタ満載の要文化資本なエンタテインメントというあたりは、 NYらしいのかもしれない。 特に1980s前半ネタは自分にもハマるものがあり、若者向けというより、 おそらく自分と同世代、40歳代くらいの大人を主要な客層として狙って制作された作品なのではないかと。 そして、そういう所も日本とは違うな、と、少々羨ましくも思った。