日産自動車が今年創立80周年に創設したアートアワードの最終選考に残った8人のグループ展。 この新作 (旧作を再構成した作品もあったが) からなる展覧会を承けて、大賞受賞者が決められる。 テーマというか賞の方向性を掴みかねる所はあったが、 既に名の通った作家も多く、 絵画や彫刻というよりインスタレーションを中心に揃え、 プロジェクトの記録のような雑然としたものではなくすっきりきっちりと作られた作品が並んでいた。 どんなものだろうと様子見気分で足を運んでみたのだが、 スタイリッシュな展覧会で、期待した以上に楽しめた展覧会だった。 以下、特に印象に残った4人の作品について。
最も印象に残ったのは、西野 達 『ペリー艦隊』 (2013)。 間取りにおいて隅に追いやられがちなトイレを中心に、と、 ギャラリー空間の真ん中、それも1m余の高さにドンとトイレ個室、 あと、壁際のテーブルとソファの目の前に男性用小便器を設置した作品。 そのコンセプトよりも、実際にトイレとして使用できるように (実際に使ったかどうかは別として)、 きっちり上下水の配管をしているという所が良かった。
宮永 愛子 『手紙』 (2013) は、相変わらずナフタリンを使った作品。 今回はトランクをモチーフとして、元となったトランク、 それをナフタリンで象ったものと、透明なアクリル樹脂や 白い樹脂 (封蠟か?) で象ったもので、コントラストを作り出すようなインスタレーション。 実物を置いた窓の外、樹脂で象ったものをギャラリー空間に配置し、 その移行的な空間という感じで窓際にナフタリンで象ったものを納める空間を作っていたのも、面白かった。
安部 典子 のインスタレーション 『渚にて —— At the edge of the sea, 2013』も、 波を主題に映像や白い立体などでそれを表現した3つの作品を組み合わせてインスタレーションにした作品。 空間的な構成は別にして、 主題を揃えて異なるメディアでの表現を対比させるような所に、 宮永 のインスタレーションとも共通する所を感じた。
増山 裕之 は、時間の経過や空間の移動を、 ビデオや写真、ドローイングなど様々な形に落し込むような作品を4つ組み合わせてのインスタレーション。 2001年の1年間、毎日撮影した写真をストップモーション・アニメーション化した 『01.01.2001-31.12.2001』 (2002) は、写真を定点観測的なものではなく、 緑の多い周回できる歩道を1年をかけて一周するかのように撮影しているため、 ぐるっと一周歩いている間に四季だけが急速に進んでいくかのような映像になっていた。 『FRANKFURT-TOKYO』 (2003/2013) も、 フランクフルト-東京のフライト12時間の窓からの20秒ごと写真を繋いだでパノラマ写真に仕上げたもの。 12時間という時間経過とフランクフルト-東京という空間移動を、一枚のパノラマ写真にぐっと凝縮したかのような作品だ。