1960年代初頭から作品を発表し始めたチェコスロバキア出身の写真家の回顧展。 1968年のチェコスロバキア民主化運動「プラハの春」を捉えたドキュメンタリー写真で知られ、その時の写真は 2年前の展覧会 『ジョセフ・クーデルカ プラハ1968』 (Josef Koudelka: Invasion 68 Prague) (東京都写真美術館, 2011) でまとめて観る機会があった。 抗議行動の最前線を捉えた写真は迫力あったが、 シルバープリントではなくパネルへの印刷での展示も報道写真という印象を強く受けるものだった。
今回は回顧展ということで、初期から2000年代以降の作品まで展示されていた。 それを通して、最初期や1980年代後半から制作しているパノラマサイズの写真など、 報道写真的な要素のほとんど無い実験的でグラフィカルな作風で写真を撮っており、 「プラハの春」の写真は彼の作品としては少々例外的なものだったことに気付かされた。 チェコスロバキア時代の1960年代に取り組んでいた Gypsies や、 亡命後の1970年代の Exiles のような 断片的ながらナラティヴな詩情も感じる写真も悪く無かったが、 1980年代後半から撮っている 荒廃感のある風景を1:3のパノラマサイズにグラフィカルに切り取るシリーズ Chaos が圧倒的に格好良かった。 パノラマを素直に水平に切り取るだけではなく、構造物のラインに沿って大胆に斜めに切り取ったり、 パノラマを縦方向に使い三幅対で方形に組み合わせたり。 そんな、構図に流れを感じる細長い画面が良かった。