阪東 妻三郎 がマキノ映画製作所から独立し自身のプロダクションを設立しての第一作にして、 剣戟映画 (ちゃんばら映画) のブームを作ったとされる映画。 歌舞伎の流れを汲む時代劇映画において、それまでの歌舞伎の型を踏襲したアクションシーンを 後の殺陣に繋がるスタイルに革新した映画とも言われる映画だ。 今までその題名を目にすることはあったが、観たのは初めて。
字幕が説明的で長く、1930年前後の小津のサイレント映画などと比べ、内面描写は字幕に頼り過ぎに感じられた。 しかし、捕物の場面の完成度が高く、迫力満点。 群衆の扱いも剣以外技もバリエーションがあり、最後の長い捕物場面も全くダレない。 与力・同心だけでなく、火消し衆も捕物に動員し、捕物の手段も多様。 単に刀で斬り合うだけでなく、柔術的な投げも多用されるし、縄をかけたり、屋根上から瓦を投げたり。 野次馬の町人衆の動きも捉えていて、様々な群衆が交錯するのも迫力があった。 助けた奈美江夫妻の動きはもちろん、突き飛ばされて堀に落ちる人など群衆の構成員それぞれの動きも多様に捉えており、描写も細かい。 群衆を追う引いた映像にアップの映像を細かく入れ込む映像編集もかっこいい。
舞台は江戸時代だが主人公のあり方は近代的で、 勧善懲悪ではない社会矛盾や恋心に苦悩する主人公も当時は新鮮だったのだろうが、 なんといってもアクションシーンの迫力に魅せられた映画だった。
今回の上映はキネカ大森30周年企画で、35mm フィルムを使って、 活動弁士 (片岡 一郎)と生演奏 (打楽器 田中 まさよし と 三味線 宮澤 やすみ) 付き。 しかし、主人公が浪人となったあたりから、 この映画が無声映画で弁士と生演奏が付いていることも忘れてしまうほどだった。