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Review: 一見劇団 @ 木馬館大衆劇場 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/04/15

日曜(4月13日)の晩、宮益坂上でJacques Tatiを観た後は、浅草へ移動。 奥山おまいりみちにある 木馬館大衆劇場で大衆演劇を観てきました。 出演は一見劇団

大衆演劇に関する予備知識といえば、昔よく観ていた『コメディお江戸でござる』の演劇コーナーが 大衆演劇のフォーマットに準じたものだったということと、 小津 安二郎 の映画『浮草物語』に出てくる旅芸人一座が現在の大衆演劇のルーツに相当するものだという程度。 年始に『浮草物語』を観て以来、一度は大衆演劇を観ておきたいと思っていたので、 大衆演劇を楽しそうに観に行っている知り合いに声をかけてもらい、一緒に観に行ったのでした。

前半1時間弱は舞踊ショー。 日本舞踊ベースのものであろうとは予想していましたが、演出がこれほど派手だとは思いませんでした。 蛍光やラメを多用した衣装で、照明もぎらぎら。 割れんばかりの音量の音楽も、演歌風だけでなく、Jポップ風はもちろん、レゲエやドラムンベースにアレンジされた曲まで。 テーマも「白雪姫」まであり、何でもありなのだなあ、と。 さすが、座長の一見好太郎は、男舞も女舞も映えます。 男性が女舞する中、唯一の女性の出演者が男舞をしたのも、印象に残りました。

後半約1時間半は芝居ということで特選狂言『森の石松 閻魔堂の最期』。 場面転換のブレイクが多くて、物語の流れに乗って舞台の世界に没入するというより、派手な見せ場を繋いで観るよう。 各場面の作り込みには力が入っていて、特に、閻魔堂の前で森の石松が殺される場面は血糊を多用して壮絶。

客層は女性、特にシニア層が中心ですが、若い女性の観客も意外といました。 名画座 (というか、フィルムセンター) ではシニア層の客層はマナーの悪さが話題になるほど殺伐とした雰囲気。 同じシニア客といっても、かくも雰囲気が違うものかと。 名画座のシニア客は男性中心、大衆演劇のシニア客は女性中心ということもあるのでしょうか。ううむ。

こんなわけで、約2時間半の過剰でキッチュな世界を堪能しました。 戦前松竹メロドラマ映画や新国立劇場で観たオペラ Die tote Stadt 程度で 俗っぽいなんて言ってはいかんというか。 上には上があると痛感。こんな世界があったのか、と、圧倒された晩でした。 俗っぽさに躊躇いを感じないところが良いですね。 たまにはこういう舞台を観るのも面白いものです。 劇団や劇場による違いもあるでしょうから、もう少しいろいろ観てみたいものです。

芝居がはねた後は、近くの大衆酒場で牛スジ煮を肴にホッピーで一杯。こういう呑みもまた楽しいものです。