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Review: Ernst Lubitsch (dir.): So This Is Paris 『陽気な巴里っ子』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/07/13

シネマヴェーラ渋谷の 特集上映『映画史上の名作11』で、以前から気になっていたもののちゃんと観てなかったサイレント映画が、 柳下 恵美 の電子ピアノ生伴奏付きで上映されたので、観に行ってきました。

So This Is Paris
『陽気な巴里っ子』
1926 / Warner Bros., USA / B+W / silent / 67min.
Directed by: Ernst Lubitsch.
Cast: Monte Blue (Dr. Paul Giraud), Patsy Ruth Miller (Suzanne Giraud), Lilyan Tashman (Georgette Lalle), Andre Beranger (Maurice Lalle), etc

1910年代にドイツで活動を始め、1924年にアメリカへ渡りハリウッドで活動した映画監督 Ernst Lubitsch が、 アメリカでの最初の会社 Warner Bros. で作成した1926年作のサイレント映画。今回初めて観ました。 Lubitsch が得意とした艶笑喜劇で、 医者夫婦 (Giraud 夫妻) と通りを挟んだ部屋に住むダンサー夫婦 (Lalle 夫妻) の 2組の夫婦の浮気心が織りなすドタバタを描いた映画です。 あらすじを書くのも馬鹿らしいほど話だけ追うと酷いものなのですが、さすがに、個々の場面は良く出来ています。 特に素晴らしいのは、モンタージュを駆使した Grand Ball での Charleston 競技会の場面。

実は、この場面だけ Unseen Cinema: Early American Avant-Garde Film (1894-1947) (Image Entertainment, ID0592DSDVD, 7DVD box set, 2005) で観ていて、Lubitsch がこんな実験的な映像を作っていたのかと意外に思ったものでした。 この場面が映画全体の中でどう使われているのか気になっていたうえ、 その映画が生伴奏付きで観られるということもあって、今回、足を運んでみたのでした。 映画の中でも後半、最後のオチの前の一番の盛り上がりの場面でしたが、 こんな凝ったモンタージュを使った実験的な画面はこの場面のみ。 ステッキを飲み込ませたり、妻に怒られて身が縮んだり、とか、ちょっとした遊び心のあるトリックもありましたが。 他の場面は視線などで丁寧に男女の綾を描く Lubitsch 風の映画でした。

アヴァンギャルド映像的な見所は Charleston 競技会の場面程度でしたが、 DVDでの安っぽいシンセサイザーの伴奏より電子ピアノ生演奏の方が合ってましたし、 あの場面を大画面で見ることができただけでも、足を運んだ甲斐があったでしょうか。