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Review: Hilty & Bosch: New Old School Dance Live @ 六本木 SuperDeluxe (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/07/21
SuperDeluxe, 六本木
2014/07/19 19:00-22:00.
出演: Hilty & Bosch, STUTS, Tatsuya Ogusu, Katsufumi Matsui, Fujimoto Tetsuro, Tokyo Basement Boyz, Yuta Takeuchi.

Hilty & Bosch は You と Jin のストリートダンス2人組。 1997年結成で大阪を拠点に活動していて、海外進出にも積極的で海外のコンペへの参加・優勝の経験も多いのですが、東京での単独公演は初めて。 ストリートダンスに関しては疎いのですが、ダンスのスタイルとしては気になっていたところ。 劇場・ホールのような大箱での公演ではなく、また主にコミュニティに向けられたイベントでもない所で、 レベルの高いストリートダンスを観られる、ということで運んでみました。 SuperDeluxe のようなハコなら、自分でもあまり場違い感無く済むかな、と。

彼らのスタイルは Locking というもの。 動きを「ロックする (止める)」というのがその名の由来で、ダンスの要所要所でカチッと「ロック」を決めていくのが、見ていても気持ち良い。 YouTube の映像で少し予習はしていたのですが、ライヴでは動きの速さがより際立ってメリハリが感じられます。 音楽に合わせての動きの緩急やロックの決めが見所のようで、そういう所で観客から歓声があがることが多かったように思います。 自分には判らないタイミングでも歓声が上がっていたので、そこだけが見所ではないのでしょうが。 もちろん Locking だけで構成するのではなく、 Breaking (手を付いて腕で支えての動き) や Popping (うねるような歩き方など) らしき動きなど、 他のストリートダンスのスタイルも組み合わせているようでした。

ショーの構成は、一曲数分の長さので完結するダンスを繋げていくショーケースのスタイル。 前半は “New Old School” と題して最近の作品を、 後半 “History” は過去のコンペで受賞したような有名なダンスを当時の映像と合わせて再現するというもの。 過去の映像と現在のダンスをばっちり合わせられるというのも、凄いものです。 ゲストのダンサーが即興のダンスでバトルしたりと、即興的な要素もありましたが。

使われていた音楽のジャンルに疎く、The Art Of Noise: “Moments Of Love” くらいしか知った曲はありませんでしたが、 new school 以降のダウンテンポな hip hopではなく、ミドルテンポ以上の funk や old school hip hop、electro のような音楽が使われていました。 録音は半分程度、ビートメーカーの STUTS が Akai MPC をライヴで操作してビートを作る時もありました。 MPCの小さなパッドを手首のスナップに細かい指先の動きも駆使して巧みに叩き続けて「演奏」する様も見所でした。

MCでのやり取りだけではなく、観客の歓声でダンスが盛り上がっていくような所もあり、 ダンサーと観客が近いこぢんまりとしたハコならではの雰囲気を楽しむことができました。 大阪に対する地元意識や地元ではない東京でやるにあたっての東京を地元とするダンサーへのリスペクトがMCから感じられて、 第一にコミュニティに向けられた表現なんだなあ、と。 (Simon Frith のいう所の “folk” の価値基準が支配的なジャンル、というか。) それにしても、こんな大入りの SuperDeluxe も久しぶり。 自分がよくここで観てるものとは全く違う客層が新鮮でした。若い子が中心だし。 やはり B-Boy っぽい子が多いのかしらんと予想していたのですが、 メガネにチェックのシャツにGパンとか見た目 B-Boy じゃない子もけっこういて、層も幅広いんだなあ、と。 そんな所も面白く感じられた公演でした。