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Review: Arnold Finck (dir.): Die neue Erde 『新しき土[ドイツ版]』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/08/24

東京国立近代美術館フィルムセンターでは小ホールで 『映画の教室2014』という小特集が組まれています。 レアな映画というより映画史上名の知られた映画を取り上げる上映です。 今年に入って映画づいていることですし、勢いがあるときに少しは勉強もしておこう、と、この映画を観てきました。

1937 / ファンク映画製作所=東和商事=J.O.スタヂオ / 白黒 / 126min.
監督: Arnold Fanck.
早川 雪洲 (大和 巌)、原 節子 (大和 光子)、小杉 勇 (大和 輝雄)、市川 春代 (照雄の妹 神田 日出子)、Ruth Eweler (Gerda Storm)

山岳映画を得意としたというドイツの監督 Arnold Finck が日本を舞台に撮った映画。 というより、1936年の日独防共協定成立を承けた二国の思惑の下で制作され、 ヒロインの当時17歳だった 原 節子 が有名となるきっかけとなったことで知られる映画です。

当時の日本各地の風景が美しく撮られていますし、 地震や活火山の描写などはドイツ人には珍しかったのだろうなあと思わせるものがあり、興味深く観られる所もありました。 しかし、阪神電車のネオンに東京音頭が被ったり、 大和家の近くに火山 (北アルプスの焼岳) があると思いきや厳島神社が近所にあったり、 神道と仏教がごっちゃになっていたりと、 継ぎ合わせが整合しておらずリアリティに欠ける日本描写になってしまっていて、残念な感じでした。 映画中の東京のホテルという設定の Hotel Europe が Frank Lloyd Wright 風なので帝国ホテルかと思いきや、 東京ではなく兵庫県西宮にある F. L. Wright の弟子 遠藤 新 の設計の甲子園ホテルだったり。

ドイツ留学帰りの輝雄が日本を良さを再発見していくという様を、 連れて帰ったベルリンの大学時代のカールフレンド Gerda から 留学費用を出してくれた養父の娘にして許嫁の 光子 へ気持を戻していくということと重ねて描いています。 しかし、クライマックスの、輝雄に絶望して火山口に身投げして自殺しようとする光子と、 それを止めるべく追いかける輝雄、という場面が、そういう日本再発見のテーマと関係なく、 荒々しい火山を背景としたアクションが撮りたかっただけだろう、という。 高い火山を山頂まで和装の正装で登るというのも、靴も履かずに靴下一丁で地獄を駆け抜けて追いかけるというのも、 リアリティが無く、むしろ可笑しいほど。 あんな無茶な体を張った山登りが似合う男優は、あの当時は、小杉 勇 くらいしかいないだろうなあ、と。

結局、輝雄は光子と結婚し、関東軍の兵士が守る、満州の辺境の開拓農民となるのですが、 ドイツへ留学したほどの男と、いいとこのお嬢さんが、どうしてそんなことをやってるのか、と。 そもそも、美しき日本を再発見したという話の流れが、最後に土地が無く人が溢れてるので開拓しようという話に、飛躍を感じてしまいました。

同時代の松竹メロドラマも酷い御都合主義とか破綻した設定とかあるものの、 小市民的な生活感の積み上げや娯楽映画ならではの勢いでクリアしてしまう感もあるわけですが、 この映画はなまじ生真面目に作っているのに細部のリアリティに欠けるため、図式的な映画に感じられてしまいました。うーむ。

主役の 小杉 勇 の熱血キャラも苦手な方なのですが、 ヒロイン役の 原 節子 があまり好みのタイプじゃないということも、 映画の世界にのめり込めなかった一因かもしれない、と思ったり。ふむ。