TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 八代 毅 (ハヤフサヒデト) (dir.) 『争闘阿修羅街』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/09/02

先週末日曜のラピュタ阿佐ヶ谷モーニングショー 『戦前日本SF映画小回顧』 で観た残り1本、大都映画の鑑賞メモ。

『争闘阿修羅街』
1938 / 大都映画 / 白黒 / サイレント / 36min.
監督: 八代 毅 (ハヤフサヒデト).
ハヤフサヒデト (速報記者の隼), 大岡怪童 (写真撮影のデブ山) 松村光夫 (発明家 松村), 大河百々代 (その令嬢 亜喜子), 大山デブ子 (女中), etc

速報記者の隼と写真撮影のデブ山の半人前コンビが松村の設計した無線操縦飛行機を取材してこいと命じられ、 自宅さらに別荘へと取材におしかけるもののなかなか明かしてもらえず、 さらにその間に、裏切った支配人一味に設計図を奪われ、松村父娘は誘拐されてしまう。 隼・デブ山は支配人一味を追いかけ戦い、父娘2人を救出する、というアクション・コメディ。

戦前随一のアクション男優ハヤフサヒデト (監督としては八代 毅 名義) の 出演・監督する現存ずる唯一の映画とのことで、やはり見所はハヤフサのアクション。 バイクで追いかけるシーンも良いし、 得意としたといわれる張ったワイヤにブラ下がって高所から滑り降りる所も凄いのですが、 ビルの屋上を飛び移り走り回るシーン。半世紀早過ぎたパルクールかフリーランニングか、という。 それを捉えるカメラのアングルもモダンでした。

コメディの要素もなかなか良くて、 気が強くてお転婆な令嬢と隼のどつき合いカップルの雰囲気良いし、 コンビを組むデブ山を演じる大岡怪童のボケキャラも、良い対照となっていました。 それに、松村家の女中役の 大山 デブ子 が愛嬌あるキャラでとても良かった。 寺山 修司 関連もあってその名は知っていたけれども、映画の中で動く 大山 デブ子 を観たのは初めて。 これは人気あったのだろうなあ、と納得。 フライヤではクレジットされておらず期待してなかったので、観られて得した気分になれました。

サイレントながら活動弁士付き (弁士:山城秀之) で観ることができましたし、弁士も悪くなかったのですが、 とてもモダンなセンスのアクション・コメディ映画だっただけに、トーキーで製作されていたらなあ、と、思ったりもしました。

令嬢を演じる 大河百々代 は河合映画〜大都映画の社長 河合徳三郎 の娘で、 その姉はハヤフサヒデトと結婚しているということで、義理の兄妹という。 低予算のB級映画で知られる大都映画ですが、けっこう家族的な映画制作だったのかもしれません。