浜に打ち上げられたとおぼしき自動車かバイクの部品らしきものを、 浜に落ちていた状態のままではなく、抽象的なセッティングで撮影した白黒写真。 由来のある部品として物語を想起させるというより、抽象的な幾何形態を際立たせる写真だ。 背景はほぼ真っ黒なのだが、ざらついたテクスチャがあり、暗い色の砂を押し固めたかのようにも見える。 そのことが「浜辺で」あることを連想させる。 素材はゼラチンシルバープリントのようなのだが、和紙様のざらついた表面の紙にプリントされているせいか、感材が厚く塗られているせいか、 黒みにぼろぼろと剥げ落ちそうな質を感じる。 それが、腐食した部品の質感にも合っていた。 最近の骨董等を使ったコンセプチャルな展示はあまり好きになれないでいるのだけど、 今回の写真展は久々に良いなと感じた展覧会だった。