1920s-30sに活動したフランスの家具デザイナー/建築家 Pierre Chareau の展覧会。 前半は1920sの Art déco 風の家具。 イギリスで学んだ独特にセンスで注目されたと解説にあったが、さすがに具体的な違いは判らず。 「近代的な生活のための家具」のコーナーにあった書斎机と椅子 (1928) や、 「新しい女性が住むための空間」のコーナーにあった化粧台と椅子 (1925-27) など、 すっきりモダンで機能的ながら紫檀やマホガニーといった素材から上品さが染み出てくるようなところが、魅力的だなあ、と。
1920s後半から「木と金属」の時代ということで、金属素材に取り組むようになって、 Art déco というより Modernism へ。 スチールパイプをつかったストールにしても、同時代の Bauhaus とはかなり異なるセンス。 「扇形構造の折りたたみ椅子」 (1927) やそのヴァリエーションに、折りたたみの方式だけでなく、面的な金属素材の使い方に、独創性を感じた。 今まで椅子を含むモダン・デザインの展覧会はそれなりに観てきたつもりだけれど、 こんな可能性もあったのかと、発見だった。
展覧会のメインとも言える「ガラスの家」 (1932) は、 Renzo Piano の Maison Hermès Tokyo の引用元ともいわれるガラス・ブロックのファサードを持った家。 具体的にどこと指摘しがたいのだけれど、モダニズム建築しては生活感があるもの。 他の建築展ではなかなかそういう事がないのだが、写真と資料のみに展示にも関わらず、そこでの生活がイメージされるものだった。 これも家具デザイナーならではの生活感の持ちようのせいかもしれない。 一戸建ての新築ではなく、街中のアパルトマンのリフォームとでもいうものなのだが、 3階の住民を立退きさせることができず、3階部分を支えたまま1, 2階部分を取り除き、その空間に3階の住居を作り込んだという。 そんな作りにも驚かされた住宅だった。
1941年にアメリカへ移住。 その後も建築家としての実作もあり、その資料も少し展示されていた。 クリエイティヴだったのは戦間期フランス時代だったのかな、と感じる展示だった。