東京都庭園美術館が 3年間の修復を経て11月22日にリニューアル・オープンしたので、さっそく足を運んできました。
リニューアルオープン記念展は、1933年築のアール・デコ様式の洋館それ自体を観せる展覧会。 特に、手掛けた「アーキテクト」に焦点を当て、修復で判った技法の詳細や修復の様子のビデオも展示されていました。 1984年の会館以来何度となく足を運んでいた美術館なので、 アーキテクトや修復の様子、アール・デコの装飾のディテールよりも、 それまで窓を塞がれ壁や床の装飾を覆われていた展示室が本来の住居空間に戻っていたことが新鮮。 窓があいて日の差し込む一階大食堂がこんなに気持ちよく開放的な空間だったのか、 二階の奥まった所にある姫宮寝室・居間の女の子の部屋っぽい色彩 (ピンクのマントルピース) を持っていたのか、と気付かされた。 それまでも目に入っていたものもあると思うが、本来の部屋の使われ方を知ることにより、見えてきたディテールもあった。
合わせて開催された 内藤 礼 の個展は、 ガラス張りファサードも明るい改築された新館の一階ギャラリーのホワイトキューブを使った展示と、 アール・デコ洋館の本館を使ったインスタレーション。 ギャラリーで展示された連作 color beginning (2013-14) は、 ほぼ真っ白なキャンバスにうっすら色の輪が浮かび上がる、ミニマルなカラーフィールド・ペインティグを思わせる作品。
ギャラリー中央やや奥の床に高さ数センチの帽子を被った人形が小さな鏡と向き合うように置かれている。 この人形と同様のものが、洋館のあちこちに置かれていた。 鏡に取付かれたかのように、もしくは、窓際や窓からの光の通り道に。 存在を強く主張するものではないが、さりげなくも目に付きやすかった。 奥の新館の展示室に置かれた展示ガイド以外に本館のインスタレーションの説明は無いのだが、 それを見るまでもなく気付く程だ。 住居だった空間を使っての遊び心を感じるインスタレーションだったが、 内藤 の作品でよく見られる繊細で気付きづらい物に目を凝らして感覚を研ぎ澄ます面白さが感じられなかったのは残念。
自分が観た時は、リニューアルオープン直後の連休中で、客が多く、建物の中も騒ついていました。 天気の良い平日の午前の、客が少なく静かな時に観て回ると、インスタレーションの印象も大きく変わりそうです。 ちなみに、平日であれば館内写真撮影可。その点でも平日に行く方が良いかもしれません。
新館の庭側にはテラス席もあるカフェが設けられています。 こういう場所なので高いのは致し方ないとは思いますが、 席が空いているのに外に待たせている客を放置していたり、注文を忘れたりと、オペレーションはかなり残念な感じ。 オープン直後の慣れない所に客が殺到したということもあるでしょうし、そもそも人手が足りていないようにも見えました。 今後の改善を期待したいものです。