サイレント末期の1932年に写真科学研究所 (PCL) として活動を始めた 世田谷区砧の映画スタジオ 東宝スタジオ の歩みを追った展覧会です。 最近、戦前の映画をよく観ているので、主にその関心で足を運びました。
戦前のPCL〜東宝といえば、エノケン・ロッパ に 原 節子。 ということで、その界隈の資料もいろいろ観れるかと期待したのですが、 特に 原 節子 の存在感がほとんど無かったのが意外でした。 戦間期には 村山 知義 や 瀧口 修造 もPCL/東宝に入社して仕事をしていた、という事を思い出したのが収穫。 資料展示されていた 村山 知義 (dir.) 『恋愛の責任』 (東宝, 1936) など、 原作が 片岡 鉄兵 でむしろ松竹大船が得意としそうなモダンなメロドラマ映画っぽそうと思ったり。 映画は現存して、上映機会もたまにあるようなので、いずれ観てみたいものです。
展示のメインに大きくフィーチャーされていたのは、 やはり 黒澤 明 『七人の侍』 (東宝, 1954) と 本多 猪四郎 / 円谷 英二 『ゴジラ』 (東宝, 1954)。 この展覧会でこの二本が同じ年に公開されたことに気付かされました。 東宝撮影所の、というか、映画の全盛期はこの頃だったのだなあ、と感慨。 展示も1950年代、1960年代の全盛期に焦点が当てられていました。 確かに、最後のギャラリーの最近の映画作品に関する展示や、 予告編で観る東宝映画のコーナーに、東宝映画のPR色を感じるところがありました。 しかし、見本市やPR展示のようになりがちなこの類の展覧会の中では、 時代変遷やジャンル、スタッフの作家性などに着目して整理を試みた展示となっていました。