細かく飛び散った雫の跡のような抽象的なイメージのドローイングアニメーションで知られる 石田 尚志 の大規模な個展。 2000年前後からグループ展で度々観ていて、気になっていた作家だったので、足を運んでみました。 まとめてみると少々単調にも感じましたが、ライヴペインティングからの流れもわかり、表現のバックグラウンドに納得するところもありました。
フラットにドローイングを撮った作品より、浅い焦点深度で浅い角度から紙面の奥行きも生かして撮った 『海坂の絵巻』 (2007) や『色の波の絵巻』 (2010)。 単に巻物に抽象的な絵が描き進められていくだけでなく、インクのドリップが染み込み乾く様も捉えられているようで、 平面的なアニメーションとは違う、三次元感、質感が感じられます。 舗装された直線の歩道を歩きながら水で描いていくようすをビデオで捉えた作品など、その実写版ともいえるものでしたが、 実写版にしてしまうと高密度な描きこみが失われて、物足りなく感じました。
ギャラリーのような小部屋の壁へのドローイングしてのストップモーションアニメーションも、 窓から差し込む光をモチーフにした Reflection (2009) や、 シンプルな白黒の『白い部屋』など、良いとは思いましたが、 『海坂の絵巻』などの絵巻ものに比べて、スピード感、湧き上がり感に欠けて、物足りなくも感じました。