Suomen Kansallisbaletti [Finnish National Ballet / フィンランド国立バレエ] 出身というバックグラウンドを持つフィンランドの振付家 Tero Saarinen の率いるカンパニーの公演。 Saarinen の作品を観るのは初めてです。
男性のみの8人による作品で、もちろん力強い跳躍もありましたが、 黙々と歩き回ったり、身悶えのたうち回るような動きや、舞台の脇や奥に倒れこんだりうずくまる様子も印象的な作品でした。 ポストマフォーマンストークによると Saarinen は男性の繊細さを表現したかったとのことですが、 むしろ、くたびれた男性のうろたえ、のようなものを見たよう。 男性ダンサーのみのダンス作品は力強さや英雄的な苦悩とかを表現しがちなので、 そうではないものをユーモラスではない形で主題としている所が、興味深く思えました。
舞台美術は、両袖と奥に二重に数十cmおきに天井から床までロープを垂らしたというもの。 ダンサーがかき乱して揺れる場面などライティングもあって美しかったですが、 背景的でダンスにあまり絡まなかったのは少々残念。 むしろ、フード付きのスーツのような舞台衣装の方が、印象に残りました。 スーツを着た中産階級以上の者ともフーディを着た労働者階級の者とも、いや、中世的な隠遁者のようでもあり、 社会階層や時代を捨象するというより多義的に見せているように感じられました。