戦間期の1920年代に活動を始め、戦後も長く1980年代まで活動を続けた建築家 村野 藤吾 (1891-1984)。 そんな彼の設計した建築を、1999年から制作されてきている80点の建築模型を中心に構成された回顧展です。 この建築模型は、京都工芸繊維大学の建築学研究室を中心に組織された「村野藤吾の設計研究会」が 開催してきている「村野藤吾建築設計図展」に合わせ、学生が制作してきたものとのこと。 現在はビックカメラとなっている有楽町の読売会館 (1957) などを戦後の建築はいくつか知るものの、 戦間戦中期の仕事を見る良い機会かと、足を運んでみた。
図面や写真の展示も控えめに、彩色なしの白い建築模型がフロアにずらりと並ぶ様は、圧巻。 そんな中、戦後高度成長期以降の大規模な建築よりも、 ロシア構成主義を含む戦間期モダニズムの影響を直接的に感じるフォルムの 低層で小規模な戦間期1930年代の建築の方に惹かれました。 そのフォルムの好みだけでなく、小規模な建築の模型はスケールが1/100 (大規模なものは1/200) で細部まで観やすく、 脱色された模型という展示形態もモノクロ写真で当時の建築を見るのに近く感じられた、ということもあるかもしれません。
特に印象に残ったのは、ガラス張りに文字を配したファサードもモダンな キャバレー・アカダマ (大阪市中央区, 1933) や、ロシア構成主義の文化宮殿を連想させられた宇部市民館 (宇部市, 1937)。 アンビルトですが、楕円の形状も大胆な ダンスホール設計案 (京都市東山区, 1933) も。 このような娯楽・集会施設だけでなく、 シンプルながら居室の並びをジグザクにした集合住宅 大阪パンション (大阪市西成区, 1932) や 原美術館のようにゆるかやに曲がった棟も印象的な 叡山ホテル (京都市左京区, 1936) も良かった。 そんな模型を見ていて、日本の戦間期モダンの雰囲気を見るような楽しみがありました。
模型展示されていた戦間期の建築は現存しないかアンビルトのものが多いのですが、 そんな中、金沢に二棟、加能合同銀行本店 (現:北國銀行武蔵ヶ辻支店, 金沢市, 1932) と 紙卸商中島商店 (金沢市, 1932) が現存するよう。 どちらの武蔵ヶ辻近くの便の良いところですし、今度金沢に行くときはちゃんとチェックしたいものです。