1973年に Bob Fosse 振付で初演されたブロードウェイ・ミュージカル Pippin。 2012年に American Repertoty Theater で新たに演出され、2013年にブロードウェイに進出したヴァージョンを観てきた。 実は、ブロードウェイ・ミュージカルを観るのは初めて。 一番の興味は Gypsy Snider (Les 7 doigts de la main) [鑑賞メモ] よるサーカス技を駆使した演出だったが、これもブロードウェイ・ミュージカルを観てみる良いきっかけかと。
ひょっとしてサーカス的な要素は背景の賑やかし程度かもしれないという悪い予感もあったが、かなり本格的に取り入れていた舞台は楽しめた。 特に第一幕の Pippin が Grandmother の家を訪ねた場面では、 Grandmother 役の女性が男性パフォーマーのサポートを受けながらとはいえエアリアルの技をこなしながら歌うという所に、驚かされた。 続く性的に放縦した生活を描いた場面でのバーレスクがかったアクロバットとエアリアルのスペクタルの場面も見応えあった。 後半になると、サーカス技はめだたなくなってしまったが、 Pippin が彼を救った寡婦である「平凡な女性」Catherine とベッドを共にする場面で、 エロチックな面を強調しない男女のハンド・トゥ・ハンドのアクロバットでそれを象徴的に表現したのも面白かった。
アクロバット、エアリアル、チャイニーズ・ポール、ロシアン・バーそして、ジャグリングやフープ、シル・ホイールなどの技が散りばめられていたが、 マジックというかイリュージョン的な技も多用していたのは、予想外。 Pippin が父 Charles The Great を殺してしまう場面でも、亡骸となった父を布の中で消したり。継母の早着替えの技も印象に残った。
歌って踊ってのブロードウェイ・ミュージカルという点については、初見ということもあり、なんとも判断しかねるところ。 物語はフランク王国カロリング朝の Charles the Great の子 Pippin を主人公とする話なのだが、 史実を踏まえたというような話ではない。 出だしこそ Pippin の時代に Univ. of Padua は無いだろう、とか引っかかっていましたが、 それどころかヨーロッパ初期中世らしき趣向もほとんど全く無い。 過去という設定は寓話的にする道具立ということに気づくと、そんなことも気にならなくなった。 Pippin という青年の自分探しという主題も、特に彼が結ばれる Catherine の設定も、現代的な物語だった。 狂言回し的な登場人物 Leading Player も入れてメタな位置からの批判も入れ込んでいるけれども、 自己啓発を思わせる自分探しの物語は現代アメリカぽいと思いながら観ていた舞台だった。