中国の泉州の出身で、現在は New York を拠点に活動する現代美術作家 蔡 國強 (Cai Guo-Qiang) の新作を中心とした個展。 火薬を使った絵画や、花火を使った大規模な野外プロジェクトで知られる作家だ。
火薬を使って描いた絵画やタペストリーは、15年近く観てきているが、次第にうまくコントロールされて表現が細かくなったよう。 自分も慣れたこともあると思うが、最新は以前ほど衝動があまり感じられなくなってしまっている。 会場で上映されていた火薬絵画制作の様子を捉えたビデオを観ると、制作に使われた美術館のホワイエに立ち込める爆煙も凄まじく、 その現場を体験するとまた違うかもしれないとは思うが。
今回、火薬絵画ではない作品、ガラスの壁と99体の狼のレプリカを使ったインスタレーション作品 “Head On” (「壁撞き」, 2006) を観た。 Berlin で制作された東西ドイツ統合後の「見えない壁」に着想した作品とのことだが、 このテーマというより99体ものレプリカ狼の存在感が火薬絵画に勝っており、新鮮に楽しむことができた。
新作中心で回顧展的に経歴を辿るような展覧会ではなかったが、 会場で上映されていた過去のプロジェクトを年代を遡るように辿ったビデオ “Rewind” (「巻戻」, 2015) を観ていて、 花火を使った野外での大規模なプロジェクトが、彼の本領なのかもしれないな、と。 夜の花火のプロジェクトは花火ショーと紙一重にも感じたが、 昼に打ち上げる黒煙の「黒い花火」など、観る機会があれば、とも思った。