Dinh Q. Lê はベトナム生まれながら、インドシナの戦火を逃れて10歳で渡米、アメリカを拠点に活動する現代美術作家。 1990年前後から活動しているようですが、観るのは初めて。 (グループ展で観ているかもしれませんが、記憶に残っていません。)
そのバックグラウンドから、ベトナム戦争に関する題材を扱うということは解るのですが、 いかにも現代美術な手つきでその問題をインスタレーションやドキュメンタリ的に取材した映像作品に纏めているよう。 むしろ、2枚の写真を細く切って編み上げてモザイク状に合成した最初期の Photo Weaving シリーズが、 その相反するイメージの組み合わせもあって、良かったように感じました。
展覧会のパンフレットには「歴史の陰で語られることのなかった物語」とありますが、 この Photo Weaving シリーズにしても、ハリウッド映画などの既存のイメージを用いたもの。 NHKスペシャル 『映像の世紀』 の再放送を見た直後ということもあるかと思いますが、 そのような所で必ずのように取り上げられた有名な報道映像など、 むしろ既存のベトナム戦争のイメージに基づく作品 (よく言えば脱構築だが、悪く言えば縮小再生産) の方が多く感じられました。