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Review: 『そこにある、時間 ドイツ銀行コレクションの現代写真』 Time Present: Photography from the Deutsche Bank Collection @ 原美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/12/27
『そこにある、時間 ドイツ銀行コレクションの現代写真』
Time Present: Photography from the Deutsche Bank Collection
原美術館
2015/09/12-2016/01/11 (月休;9/21,10/12,11/23,1/11開;9/24,10/23,11/24,12/28-1/4休), 11:00-17:00 (水11:00-20:00).

ドイツ銀行のコレクションに基づく1970年代以降の写真の展覧会。 ドイツということで、Becher Schule の形式主義的な写真を期待していた。 確かに、Bernd & Hilla Becher、Thomas Schuldt、Andreas Gulsky らの写真もあった。 しかし、アメリカのシミュレーショニズムの写真は無し。 そもそも欧米の写真史の文脈に乗らないようなアジアやアフリカの写真家の写真が多め。 それも、画面構成の形式的な面白さよりも、社会背景を意識した演出写真が目立った。

中国出身の曹斐 [Cao Fei] によるミュージシャンやダンサーを夢見る工場労働者をその職場で夢の姿で捉えたポートレイトシリーズ 『自分の未来は夢にあらず』 [My Future is Not a Dream] や、 アルバニア出身でイタリアで活動する Adrian Paci による故郷を描いた書き割りの前でのアルバニア移民の家族写真シリーズ 『帰郷』 [Back Home] など、特に印象に残った。 日本の作家では やなぎみわ 『My Grandmothers』シリーズが出ていたのだが、なるほどそのような文脈の表現に乗る写真と観ることができるのか、と。

自分の好みは Becher Schule だが、その好き嫌いや是非は別にして、 報道写真とは異なるドキュメンタリー演劇の写真版のような表現の潮流があるということに気付かされた展覧会だった。

原美術館といえば Café d'Art のイメージケーキですが、今回はフルーツの乗った紅茶のムース。 これは、おそらく、出展作品の中で最も抽象的な写真 Sigmar Polke: “Uranium” なのではないかと。 演出写真のような人物写真が多い写真展のイメージケーキは苦しいものがあります。