織田信長の普請奉行 竹中藤兵衛正高 をルーツに持つ竹中工務店の展覧会。 四百年の歩み、文化史という言葉がタイトルに入っていますが、 歴史を描くような面は薄く、むしろ、竹中工務店が幅広いジャンルの建築を手がけてきていることを示すような展覧会でした。
近代建築以前の寺社建築については「はじまりのかたち」のコーナーにまとめ、 それ以降は、利用目的の観点から建築を大きく6つのジャンルに分け、ジャンルごとにコーナーを作っていました。 年表も示されていましたが、建築の年代順に展示を並べてはいませんでした。 ジャンルごとに代表的と思われる建築を取り上げ、図面などの資料よりも写真と模型を中心に展示していました。 個々の建築の説明もそこそこに、ずらっと写真や模型が並ぶ様は圧巻。 ディティールに踏み込む以前に、あれもこれも竹中工務店なのか、という感慨が先に立った展覧会でした。 作家性の高い建築家を中心に据えた建築展とは異なるとっつきやすさはあったように思いましたが、 企業のPR展示を見ているような感覚に陥るときもありました。
紹介されていたのは戦後のものがほとんどで、戦前の近代建築の展示は目立ちませんでした。 初めて手がけた近代建築が三井銀行神戸小野浜倉庫 (1900) という煉瓦造りの倉庫だったというのは、戦後に手がけている建築と比べると意外でしたが、 当時の煉瓦造りの倉庫は意匠的にも工法的にも当時の最先端だったのだろうあと。 やはり興味を惹かれたのは、宝塚大劇場 (1924) や雲仙観光ホテル (1937) などで、こういうのをもっと観たかったなあ、と。
建築家の個性を押し出さずに様々な建築を手がけているだけに、 年代順に整理すれば工法やデザインの流行を浮かび上がらせることもできたのかな、とは思いましたが、 それは企業に焦点を当てた展覧会の役割じゃないのかもしれません。