Noism は新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」の劇場レジデンシャルのダンスカンパニー。 レジデンシャルのダンスカンパニーは日本では実質 Noism のみということで、一度観てみたいと思っていましたが、観るのは今回初めて。 Noism の「劇的舞踊」シリーズの第3弾となる『ラ・バヤデール — 幻の国』は、 公共劇場専属劇団であるSPACの俳優3人が客演し、平田 オリザ の脚本 という話題性もあり、 これもよいきっかけかと、足を運んでみました。
Léon Minkus 音楽、Marius Petipa 振付で1877年に初演された ballet 作品 La Bayadère を翻案した作品でしたが、 物語もダンスも予想以上にバレエ La Bayadère でした。 原作では古代インドが舞台のところを1931-1945の満州国を舞台に置き換えていましたが、 一見関係なさそうな話を巧みに繋ぐ見立てが、面白く感じました。 前半はダンスが物語や役割を説明し過ぎるように感じましたが、 後半のアヘンの幻覚の場面から、結婚式から最後のカタストロフは、ダンス中心となって、ぐっと良くなりました。 バレエ的なイデオムの強いダンスはさほど好みではないのですが、 鮮やかながら落ち着いた色と造形の面白い衣装での群舞は、十分に楽しめました。
俳優を客演させた部分については、特に 貴島 豪 演じた特務機関の陸軍将校ムラカミが、狂言回しというより物語の説明役みたいになってしまっていました。 La Bayadère のような古典をベースに作品を作る場合は、 観客も当然あらすじを押さえて観ているという前提で大胆に説明を省いて演出してしまっても良いように思いました。 あと、舞台音楽は世界観を統一する役割があるだけに、Léon Minkus の音楽とオリジナルのエスノ・アンビエント風の音楽にギャップがあったのも残念。 頑張って Minkus の音楽だけでやるか、いっそ、舞台の満州国に合わせた雰囲気のオリジナルの曲だけでやるか、 どちらかにすると良かったかもしれません。