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Review: 『ポンピドゥー・センター傑作展』 Masterpieces from the Centre Pompidou: Timeline 1906-1977 @ 東京都美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/08/17
Masterpieces from the Centre Pompidou: Timeline 1906-1977
東京都美術館
2016/06/11-2016/09/22 (月休;7/18,9/19開;7/19休), 9:30-17:30 (金 -20:00; 8/5,6,12,13,9/9,10 -21:00).

1977年フランス・パリに開館した美術、音楽、映画等の複合文化施設 Centre Pompodou のコレクションに基づく展覧会。 「ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで」という邦題副題や「20世紀の巨匠たち、ぞくぞく。」というキャッチコピーに、 著名な作家の作品がだらだらと並んでいるだけではないかと、嫌な予感がしていました。 しかし、1906年から1977年まで、1年ごとに1作家の1作品を取り上げるという縛りが効いて、 とても面白い展覧会になってしました。

20世紀初頭から戦間期にかけての初期モダニズムを感じる1906-1934、 第二次世界大戦を挟んで戦争の影響を感じさせる時代からの戦後のモダンに連なる1935-1959、 多様性に美術のモダンの終焉を感じる1960年以降という三部構成。 近現代美術の文脈の絵画や立体の作品を中心としたセレクションでしたが、 特に第一部を中心に、写真、映画、デザインや建築の分野も取り上げられていました。 特に、プレストレスト・コンクリート (prestressed concrete) の先駆者として知られる土木技術者 Eugène Freyssinet が手がけた Hangars de l'Aéroport d'Orly (オルリーの飛行船格納庫, 1923) は、 建築中の現場のドキュメンタリー映画が上映されていたのが、目に止まりました。 戦間期モダニズムを感じされる建築と映像で、こういうものがもっと多く取り上げられていたら、と。

確かに副題に挙げられているような著名な作家の作品も出ていましたが、 今まで意識して観る機会の無かった作家も多く、こんな作家がいたのかと気付かされました。 戦後は Nouveau Réalisme の作家が多く選ばれていましたが、 Yves Klein、Jean Tinguely、Niki de Saint Phalle といった Nouveau Réalisme の有名どころが軒並み外されていて (単にコレクションに無かっただけかもしれないですが)、そこに多様性と層の厚さを実感。 著名な作家にしても、必ずしも代表的な作風ん作品や有名な作品が選ばれているわけではありません。 その結果、作家性が抑えられる一方で時代性が表に出て、 「ポンピドゥー・センターの作品で描く1906-1977という時代」とでもいう内容になってました。 美術史的な面を強調するような構成ではなく、フランスの戦後美術史への理解が深まったというほどではないですが、 アメリカ中心の (MoMA的な) 戦後美術史へのバイアスに気付かされたようにも感じました。