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Review: Compagnie Defracto: Flaque @ 世田谷パブリックシアター (サーカス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/10/16
カンパニー デフラクト 『フラーク』
世田谷パブリックシアター
2016/10/15, 15:00-16:00.
Écriture, Interprétation: Guillaume Martinet (jonglage), Éric Longequel (jonglage), David Maillard (création musicale, régie plateau).
Mise en scène: Johan Swartvagher. Regard extérieur jonglage: Jay Gilligan. Création Lumière: David Carney.
Creé: 2014.

Compagnie Defracto は2008年に活動をはじめたフランスのジャグリング・カンパニー。 出演者のうち Martinet と Maillard は創設メンバー。 Flaque (「水たまり」の意味) は、 ジャクリング・カンパニー Cie Ea Eo で活動していた Longequel を迎えて、2014年に制作された作品だ。 出演したジャグラー2名は Festival Mondial du Cirque de Demain の受賞歴もある程だが、 ジャグリングするボールやクラブの数を増やしたりナイフやトーチをジャグリングしたりと難しさも解り易く技を見せるわけではない。 ストーリー仕立てで見せるわけでもなければ、凝った舞台装置や映像を用いるわけでもない。 むしろ、「これから始めます」などと言いつつ緩くパフォーマンスを展開していくにもかかわらず、 その動きの面白さや展開の意外さ、パフォーマーのキャラ立ちもあって、ぐいぐい引き込まれた約1時間だった。

舞台は高さを客席最前列の床のレベルまで下げられ、袖も後方もむき出しのまま。 白いテーブで約10m四方のスペースを囲み、それを主なパフォーマンススペースとして利用した。 下手後方にテーブルが置かれノートPC等の機材で音楽や照明をコントロールしていた。 ジャグリングに使うのは40個の白いボール (ビーンバッグ) のみ。 投げつけられてばらまかれたボールを Longequel は這いずり回りながら手に収めたり口に加えたり。 そんな Longequel に Martinet は直径50cmほどのスピーカーを持ちBGMを浴びせるようにする。 Maillard はノートPCやフットスイッチ等のコントローラーを使って、物音を拾ってループで回すような electronica。 奇妙で脱力気味の動きのパフォーマンスにぴったりだった。

冒頭のぐったり床に伏した動きや、ブラブラと脱力した腕を使ってのジャグリングなど、 脱力した動きというのが一つの鍵になっていた。 2人で玉を取りあってのジャグリングでも、ボールを取られるとそのまま活力を奪われるかのように倒れこんだり。 脱力して動きがコントロールされていないようで、きっちりコントロールされているという所に、意外性の面白さがあった。 もちろん、脇の下から背越しボールを投げる一つ玉ジャグリングをひたすら続けたり、這いつくばったままの移動など、脱力とはまた違う面白さもあったのだが。

音楽担当の Maillard も舞台下手で淡々とノートPCを操作しているばかりではない。 冒頭にジャグラー2人にボールを投げつける役があるだけではない。 テーブルにジャクラーが倒れ混んでくるわ、 ノートPCは放り投げられるは (ちゃんと受け止められるよう投げられているのがお約束)、 ジャグリングさせられそうになるは (結局、フットスイッチの上にノートPCを乗せて、背面投げで玉を当てさせられる)、 パフォーマンスに巻き込まれていくのも面白かった。

一旦の終演の後のアンコールでは、舞台後方の高くなった所で、 早回しのように約1時間のパフォーマンスをリプリースしたのも盛り上がった。 掴みの解りやすい演出ではなく、その魅力を言葉にし難いものがあるのだが、 まるで演出されていないかのようなミニマリスティックな演出、 確たる技術に裏打ちされたそうと感じさせない脱力したユーモラスな動き、 そして、オフビートなユーモアが楽しめたパフォーマンスだった。