ドイツ出身のコレオグラファー Sebastian Matthias の groove space は、 一定のコンセプトの方法論に沿って制作されているシリーズ作品。 x / groove space は、 現在 Matthias が factory artists として活動している Tanzhaus NRW のある ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州デュッセルドルフ (Düsseldorf, NRW, DE) と、 東京に共通する特徴程な性質と身体的な地学をテーマとしており、デュッセルドルフで初演されている。
作品はいわゆる体験型のダンス公演。 伊東 篤宏 の蛍光灯インスタレーションと 瀬山 葉子 のプロペラ様のキネティックな立体作品が2台が設置されただけの ブラックボックスのスタジオに観客を入れ、 伊東 篤宏 の optron 生演奏を音楽に観客を縫うように緩く観客と絡みつつ、ダンスが繰り広げられた。 やがて、黒ビニール袋十数個分はあろう紙吹雪というかシュレッダー屑が用意され、観客にも手渡しつつ、振りまき床一面にぶちまけられた。 派手な紙吹雪遊びまでには至らないものの、シュレッダー屑を蹴散らしひとしきり踊った後、 観客も使ってモップでシュレッダー屑は掃き集められ回収され、濡れモップで床拭きされた。 綺麗になったスタジオで最初の時のように再び踊って、スタジオ内でのダンスは終わった。
ダンサーに先導されるかのようにホワイエまで出ると、 作品制作のための書類を敷いて作ったスクリーンに、 シュレッダー屑がぶちまけられた上で観客が動き回りダンサーが踊るようすが、 天井から垂直に見下ろすアングルで撮影されたものが投影されていた。 そのビジュアルが抽象表現主義というか Jackson Pollock の絵画のよう。 映った自分の姿に少々気まずい気分になりつつも、そうか自分たちはアクション・ペインティングをしていた (もしくは、させられていた) のか、と気付かされた。
デュッセルドルフと東京の共通性といったテーマについてはピンとこなかったが、 ダンサーたちに促されて行った自分の行為のその時は意図はおろか意識すらしなかった – しかし、演出者には意図されていた – 意味に後で気付かされる、 そんな面白さを、そして、ちょっとした怖さも体験できた作品だった。