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Review: 柳 幸典 『ワンダリング・ポジション』 @ BankART Studio NYK (美術展); 『BODY / PLAY / POLITICS』 @ 横浜美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/12/04
『ワンダリング・ポジション』
Yukinori Yanagi: Wandering Position
BankART Studio NYK 全館
2016/10/14-12/25, 11:00-19:00

1980年代から社会的なテーマのコンセプチャルな立体作品やインスタレーション、野外作品を制作してきた 柳 幸典 の30年の活動を回顧する展覧会。 今までも個展で観たことがあったが、個展でまとめて観るのは初めて。 薄いアクリルの箱に国旗や紙幣の模様になるよう詰めた色砂に蟻で巣穴を作らせた Ant Farm Project のシリーズなど、 このようなプロテストというか、社会的な問題へのアプローチの仕方も20世紀的と思うことしきり。 しかし、それでも、3階の新作「Icarus cell」や「Project God-zilla -Landscape with on Eye-」など良い作品もあった。

犬島アートプロジェクトのための作品という「Icarus cell」は何箇所も直角に折れ曲がった鋼鉄性の狭い通路で、その角に45度となるよう鏡が設置されている。 鏡の表面には 三島 由紀夫 の詩 「イカロス」 の一節が彫られていて、 鏡の反射で出口側の白い光を背景に詩の各節が並んで浮いているように見える。 その美しさも良いのですが、詩を読みながら歩を進めると、背景の白い光は天窓から取られたものだと、 つまり自分もイカロスのように太陽に向かって歩を進めていたことに気づかされるという。 ちなみに、帰りはフレアや黒点も見える望遠鏡で捉えた太陽の映像が背景となり、 よりはっきりコンセプトがわかるようになっていた。

「Project God-zilla -Landscape with on Eye-」は産業廃棄物というか廃材を積み上げたインスタレーション。 うす暗がりの中、大きく光る目玉を模った球が1つ埋め込まれることで、霊を吹き込まれるよう。 それが不気味でもあり、面白かった。

横浜美術館
2016/10/01-12/14 (水休; 11/4休), 10:00-18:00
Yinka Shiobare MBE, Yee I-Lann, Apichatpong Weerasethakul, UnDam Tran Nguyen, 石川 竜一 [Ishikawa Ryuichi], 田村 友一郎 [Tamura Yuichiro].

非欧米諸国出身のアーティストを取り上げ、 その出身国の社会的な問題をテーマにしたコンセプチャルな映像作品やインスタレーションを ギャラリーごとに並べていくような展示は、良くも悪くも現代美術の国際美術展という雰囲気。 少々空虚に感じられつつも、 暗闇の中に燃える扇風機の映像が浮かび上がる Apichatpong Weeraethakul の Fireworks (Fans) (2016) は美しかったし、 ホーチミンの街中でのパフォーマンスの様子を映像化した UnDam Tran Nguyen など、 ベトナムにもこういう作家がいたのかという発見はあった。