戦後まもない1948年から1990年代まで活動した画家 山田 正亮 の展覧会。 コレクション展などで一度は観たことがあるとは思いますが、 1990年代以降インスタレーションなどを好んで観てきた自分にとっては、ほぼノーチェックの作家でした。 作品と合わせて制作意図が窺われるような制作ノートも展示されていましたが、 キュビスムの影響を感じる静物画から、Klee や Kandinski を思わせるような抽象画へ、 さらに、抽象表現主義的なストライプの絵画へ。さらに、ハメ毛が際立つほとんど単色のミニマリズムへ。 そこから、枠線のような構造やストロークが色鮮やかに回帰してくる晩年の作品へと、 まるで戦後の絵画におけるモダニズムを一人の作家でたどるような興味深さがありました。
特に印象に残ったのは、フライヤ等に用いられている代表作とされるストライプの絵画ではなく、 ミニマリズムから鮮やかな枠線のような構造やストロークが湧き上がってくる1970年代の展開。 色鉛筆やコンテのストロークで淡いテクスチャのある色面を作った作品や、 枠構造を色数は抑えつつ鮮やかな色で大きなストロークでムラを作りつつ塗り分けたような作品が気にいりました。
戦前はフォトグラムやモンタージュ、コラージュの技法を駆使した前衛的な写真作品で、 戦後は絵画や版画で知られる 瑛九 のコレクションに基づく企画展。 瑛九の評伝を著した 山田 光春 の旧蔵していた作品・資料を近年コレクションに加えたとのこと。 その中からデビュー直後の1935-38年に焦点を当て、書簡などの資料も合わせて展示されていました。 展示されていた作品は、フォトグラム技法による『眠りの理由』 (1936)、『フォト・デッサン』 (1936) や写真のコラージュ『作品』 (1937) など。 瑛九の写真作品をまとめてみる良い機会でしたが、 少々期待しすぎていたせいが、作品より関連資料の多さに肩透かし感じもありました。