Большой балет в кино [Bolshoi Ballet in cinema] Season 2016/17 で Шостакович 作曲のソヴィエト・バレエ3作の最後の作品を観てきました。 1935年にサンクトペテルブルグの Малый оперный театр (現 Михайловский театр) で初演されるも、 1936年に Правда 紙にて批判され上演中止となり、その翌年、脚本の Адриан Пиотровский は НКВД (内務人民委員部) に逮捕、処刑されます。 そんな大粛清の時代に制作され長らくお蔵入りしていた作品を、2003年にモスクワの Большой театр が復元上演したものです。 しかし、そんな曰くよりも、コルホーズを舞台としたバレエという取り合わせに興味を引かれました。 こんな作品、来日公演のレパートリーに選ばれることは無いでしょうし、こういう機会でもないと観れないだろうと。
ロシア南部のクバーニ (Кубань) 地方のコルホーズ「明るい小川」が舞台。 そこにモスクワからバレエ団が訪れることで生じたドタバタをコミカルに描いた作品です。 コルホーズで暮らす Зина [Zina] とバレエ団のバレリーナが、偶然ながら、バレエ学校時代の旧友。 Зина の夫 Петр [Petr] がそんなバレリーナと浮気しようとして、Зина とバレリーナに懲らしめられるというのが、メインの物語です。
舞台が1930s前半のコルホーズということで、衣装や美術が少々 Russian Avant-Garde 風な所も残した戦間期モダンぽさがあるだけで、 演出やダンス技法はクラシカルな物語バレエでした。音楽も不協和音使いなど前衛色は抑えたもの。 風刺というより皮肉の効いたコメディで、特に、Петр を懲らしめる第2幕はかなりのドタバタ。 Петр や引っ掛けるために、バレリーナとバレエダンサーが衣装や役割を入れ替えて踊ったり。 そんなところは、クラシカルな物語バレエのパロティといえるかもしれません。 そして、そんな所を楽しみました。
主役の Зина と Петр より、バレリーナとバレリーナの方が面白くて魅力的。特に、後半の男装で踊るバレリーナ。 あと、群舞ででてくる、コルホーズの女性たちの、細かい花柄ワンピースとヘッドスカーフというモダンな姿が、とても気に入りました。