山崎 博は1960年代末から活動する写真作家。
その時代ということもあるだろうが、初期の作品は舞踏やアングラ演劇 (天井桟敷、黒テントなど) の写真もあり、その作風もアレブレボケに近かった。
しかし、1970年代半ばには、定点観測写真のような『Observation 観測概念』シリーズや、
そこからの展開で長時間露光で太陽の軌跡を捉えた『Heliography』シリーズなど、コンセプチャルで即物的な作風となっている。
『Heliography』シリーズなど今までもコレクション展などで観ていたけれども、自分にとってはほぼノーチェックの写真作家だった。
しかし、即物的で抽象画のような作風の写真は大変に好みで、こんなに面白い写真作家だったのかと気付かされた展覧会だった。
『Heliography』もかなり好みだが、
画面二等分で水平線を捉える『水平線採取』シリーズを1970年代末から撮っていたとは。
杉本 博 『海景』シリーズの一つと言われても区別できないような白黒の作品もあるが、
カラーだったり、島や波打ち際を写し込んだり、太陽の軌跡や波のきらめきを明るく写し込んだり。
むしろ、水平線を画面二等分で捉えるという制約の中で、ミニマルな中にも多様性を作りだそうとする試みが
『海景』シリーズとは異なる面白さにも感じられた。
逆光を使ったりピントを大きくズラしして抽象画のように桜を捉える『櫻』シリーズや、
印画紙に直接露光するフォトグラムによる写真も良かったが、
やはり『水平線採取』シリーズの方がコンセプトと画面の抽象度のバランスが良くて面白いように感じられた。