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Review: Ivo van Hove / Toneelgroep Amsterdam: Othello 『オセロ』 @ 東京芸術劇場プレイハウス (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/11/07
東京芸術劇場 プレイハウス
2017/11/05, 13:00-15:45.
Director: Ivo van Hove; Author: William Shakespeare; Translation: Hafid Bouazza.
Cast: Anne-Chris Schulting (Bianca), Aus Greidanus jr. (Brabantio, Lodovico), Hans Kesting (Othello), Harm Duco Schut (Roderigo), Hélène Devos (Desdemona), Halina Reijn (Emilia), Robert de Hoog (Cassio), Roeland Fernhout (Iago).
Dramaturge: Bram De Sutter; Scenographer, light design: Jan Versweyveld; Sound design: Marc Meulemans; Costumes: An D'Huys.
Premiere 01 Feb 2003

オランダ出身の Ivo van Hove は1981年から演出家として活動を始め、 2001年にオランダ・アムステルダムの劇団 Toneelgroep Amsterdam の芸術監督を勤めているという。 といっても、この劇団についてはほとんど予備知識は無く、 むしろ、National Theatre Live で上映される舞台のいくつかを von Hove が手がけているので、 そのような演出家の舞台を生で観る良い機会かと、足を運んでみました。 ちなみに、パリ Théâtre de l'Odéon で2014年に初演され、 Young Vig での上演が National Theatre Live で上映もされた A View From The Bridge 『橋からの眺め』で 2015年の Laurence Olivier Award の Best Director を受賞してもいます。

舞台を現代に移し替えての演出で、Othello はマグレブ・アラブ系の移民で、現代ヨーロッパの軍隊の将軍とでもいう設定で、 アラブ系移民に対する差別や、軍隊内でのホモソーシャルな人間関係、不安定な中東に対する警戒感などの現代ヨーロッパの問題、 そして、昇進や異性関係における嫉妬という当時も今も変わらない問題の絡めたドラマとしていました。 そんな解釈はむしろオーソドックスと感じられるものでしたが、ミニマリスティックの演出が好みで、かっこよく感じられました。

冒頭のベネチアの場面はドレープがかった薄青緑色のカーテンを舞台三方にかけた状態で、 キブロスの場面への転換では、大きな送風機でカーテンを煽りつつ落とし、 バックヤードなどがむき出しになった舞台の中央に、少し斜めになった状態でガラス張りのモダンな部屋がせり出してきます。 この部屋は Othello と Desdemona の私邸 (というか寝室) がメインの使われ方ですが、 小部屋前の空間が客をもてなす応接間のような空間として使われている時は その奥のプライベートな部屋のようになったり。 照明を落として向こう側が透けて見やすくした部屋の裏側で Cassio に Desdemona ハンカチを持って Iago と談笑させ、 表側から2枚のガラス越しで Othello に「覗き見」させる、そんな使い方が印象に残った。 もちろん、寝室で Othello が Desdemona を殺す最後の場面、 部屋の周囲の照明を落として部屋を明るく照明することで、暗闇に浮かぶ寝室内で事件が起こっているかのような演出も良かった。

この部屋の使い方が良かったので、 ベネチアとキプロスの場所の違いを表現してたとはわかるのですが、 ベネチアの場面から小部屋だけでできなかたのかしらん、と思ってしまいました。 Desdemona を殺す寝室で Othello がブリーフを履いているのは不自然 (元の上演では全裸だったらしい)、 エンディングに歌入りの曲流すのは余韻に浸る邪魔、とか、 ミニマリスティックでかっこいい舞台だっただけに、逆に気になってしまったところもありました。