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Review: Metropilitan Opera, Tom Cairns (prod.), Thomas Adès (comp.): The Exterminating Angel 『皆殺しの天使』 @ Metropolitan Opera House (オペラ / event cinema)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/02/04
『皆殺しの天使』
from Metropolitan Opera House, 2017-11-18, 13:00–15:40.
Composer: Thomas Adès. Libretto: Tom Cairns.
Production: Tom Cairns.
Set and Costume Designer: Hildegard Bechtler. Lighting Designer: Jon Clark. Projection Designer: Tal Yarden. Choreographer: Amir Hosseinpour.
Cast: Joseph Kaiser (Edmundo de Nobile, the host), Amanda Echalaz (Lucía de Nobile, his wife), Audrey Luna (Leticia Maynar, an opera singer), Sally Matthews (Silvia de Ávila, a young widowed mother), Iestyn Davies (Francisco de Ávila, her brother), Christine Rice (Blanca Delgado, a pianist), Rod Gilfry (Alberto Roc, her husband, a conductor), Sophie Bevan (Beatriz), David Portillo (Eduardo, her fiancé), Frédéric Antoun (Raúl Yebenes, an explorer), David Adam Moore (Colonel Álvaro Gómez), Kevin Burdette (Señor Russell, an elderly man), Sir John Tomlinson (Doctor Carlos Conde), et al.
Conductor: Thomas Adés.
Cynthia Miller (ondes martenot), Dimitri Dover (piano), Michael Kudirka (guitar).
World Premiere: Salzburger Festspiele, 28 July 2016.
New Production: Oct. 26 - Nov 21, 2017. A co-commission and co-production of the Metropolitan Opera, Royal Opera House Covent Garden, Royal Danish Theatre, and Salzburg Festival.
上映: 109シネマズ二子玉川, 2018-01-27 10:00-12:50 JST.

メキシコ時代の Luis Buñuel 監督の映画 El ángel exterminador (1962) を翻案した新作オペラです。 不条理な映画をどのようにオペラ化したのかという興味で観てきましたが、まさに不条理オペラという感じで興味深く観ることができました。

Edmundo de Nobile の邸宅ではオペラ帰りの客人を迎えてのパーティの準備をしているが、 何故か使用人たちは逃げ出すように暇を取って帰ってしまう。 パーティは始まるが誰も帰ろうとせず、そのうち、扉が閉じて鍵がかかっているわけではないのに 客間から誰も出入りできなくなっていることに気づく。 水や食料も尽き、死者も出て、次第に極限状況の様相を示してくる。 緊張が頂点に達しようというとき、最初の晩の配置と同じになったことに気づき、それを繰り返すことで、 閉じ込められた状況から脱することができた。 しかし、それは新たな始まりに過ぎなかった、という物語です。 オペラでは登場人物やエピソードが若干整理されていましたが、ほぼ映画に忠実にオペラ化されていました。 登場人物が整理され演劇的にデフォルメされた表現のおかげで、映画よりオペラの方がわかりやすく感じました。 映画では見落としていた人間関係に気づかされたりもしました。

極限状況といっても極端な行動に走り出すというほどではなく、むしろ疲れ果てて雑魚寝している場面が多く、 部屋から出られない理由がわかない不条理さの方が際立地ます。 オペラ帰りのセレブ達が登場人物なのでさほど違和感はありませんでした。 現代オペラということでとっつきやすい旋律のアリアがあるわけで無く、 オペラというよりまるでストレートプレイの不条理演劇を観ているような気分でした。 主な登場人物は舞台上で出ずっぱりで、このような作品では、歌唱力だけでなく演技力も要求されるなと思いつつ観てしまいました。

Adès のオペラは初めて聴きましたが、変拍子や無調を基調とした現代オペラとはいえ、かなりとっつき易く感じられました。 Theremin にも似た音を出す1928年に発明された電子楽器 Ondes Martenot がフィーチャーされていましたが、 20世紀半ばに恐怖映画やSF映画の音楽として使われたような使い方。 メキシコの tamboril (snare drum に似た伝統的な打楽器) の連打も、息が詰まるような状況を盛り上げていました。 超絶高音の soprano も、極限状況下でのヒステリックな状態の表現にピッタリ。 このような映画音楽的とも感じられるイデオマティックな音使いも、とっつきやすさの理由かもしれません。