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Review: Sadler's Wells Company of Elders: Fragments, Not Forgotton / A Tentative Place Of Holding / Abyss @ 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/09/28
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
2018/09/23, 15:00-16:30.
Fragments, Not Forgotten 『断片 — 忘れることのない記憶』
Choreography: Seeta Patel
Dancers: Company of Elders; Rehasal Director: Simona Scott.
Sound Editing: Pete Maxey; Music - extracts from: John Metcalfe, Olafur Arnaulds; Including voice recordings from Company of Elders.
A Tentative Place Of Holding 『テンタティブ・プレイス・オブ・ホールディング — 永遠の生に向かって』
Choreography: Adrienne Hart;
Dancers: Company of Elders; Rehasal Director: Simona Scott.
Outside Eye: Natalie Corne. Music - extracts from: Adrian Wardle: “Corpus Phase IV”, John Cage: “Triple-Paced”, Nils Frahm: “All Melody”.
Abyss 『深淵』
Choreography: Dickson Mbi
Dancers: Company of Elders; Rehasal Director: Simona Scott
Music Composer: Roger Goula Sarda. Creative Support: Paris Crossley, Victoria Shulungu, Stephanie Berge, Farooq Chaudhry, Julia Cheng & Company of Elders.

英国国立のコンテンポラリーダンスの劇場 Sadler's Wells が 教育普及プログラムの一環としてプロデュースしている高齢者によるダンスカンパニー Company of Elders。 Sadler's Well では面白そうなコンテンポラリー作品が上演されることが多く、ウェブサイトで上演作品をよくチェックしてきています。 そんな劇場が、60歳以上、最高齢は89歳という年齢構成でどんな作品を制作しているのかという興味もあって観てきました。

トリプルビルで、3作品の振付家のバックグラウンドは、それぞれ、 Seeta Patel が南インド伝統舞踊 Bharatanatyam、Adrianne Hart はコンテンポラリーダンス、 Dickson Mbi はヒップホップダンスで、 3人とも若いプロフェッショナルなダンサーを使ったコンテンポラリーダンス作品を発表してきている振付家です。 振付家のバックグラウンドは多様ですが、その身体語彙を押し付けることはなく、 その作品からはそのような振付家のバックグラウンドを感じさせることはほとんどありませんでした。 最初の作品 Fragments, Not Forgotten こそダンサーのプライベートの声を使う所など Pina Bausch 的なナラティブな演出も感じる時もありましたが、 アブストラクトな A Tentative Place Of HoldingAbyss など、 高齢者の身体語彙を活かしたポストモダンダンスのような仕上がりに感じました。 最も楽しめたのは、 フロアに光で不完全な格子状のパターンを動かしつつ、それと緩やかに関係付けるように位置どりをしつつ手足を動かしていく A Tentative Place Of Holding でしょうか。

高齢者が踊るということで、早くて切れのいい動きなどは使われません。ステップを踏む程度で脚を上げるような動きもほとんど無く、腕を上げる動きも緩いものです。 それでも、自分の親とほぼ同世代と考えると、かなり踊れているのではないでしょうか。 比較的若く見える背の高い女性が一人、目立ってきれの良い踊りを見せていました。 終演後のトークの話を聴くと、プロフェショナルなダンサーとしての活動はしていなかったものの、 高齢者になる前からアマチュアとしてバレエやダンスを習ったり踊ったりしてきた方が多そうです。 トークでは多様なバックグラウンドを強調していましたが、トークに上がったダンサー3名の 引退前の職業は、テレビ局勤務、ロシア女性に関する社会学の研究者、数学の講師ということで、 労働者階級や裕福なブルジョワというより、中産階級のインテリが多そうです。 オーディションで絞っているというわけではなく、 そもそも Sadler's Wells のワークショップに参加したりオーディションを受けたりする機会が発生するような コンテンポラリーダンスの受容層を反映しているということでしょう。