毎年10月の三茶de大道芸に合わせて 世田谷パブリックシアターで開催されるサーカス公演は、 コンテンポラリーサーカスを観る良い機会と、毎年楽しみにしています。 今年はスウェーデンのコンテンポラリーサーカスのカンパニー Cirkus Cirkör。 前に観たのは2005年でしたので [鑑賞メモ]、久々です。
今回のプロダクション Limits は、2015年のプロダクション Borders の続編とのこと。 100万人以上の難民が欧州に殺到した2015年欧州難民危機をテーマにしたプロダクションです。 サーカスで時事問題を扱う場合は風刺的な寓話やコメディのような形で扱うことが多いように思いますが、 この作品ではそのアプローチは取らず、難民に関する統計的なデータを演技の背景に投影したり (Talking Heads の “Nothing But Flowers” の ビデオを連想しました)、 難民の証言をナレーションのように流したり、関連する映像を投影したりという、ドキュメンタリに違い扱い。 しかし、例えば難民の証言に着想した演技がされているかと言えば、あると言えばそうかもしれないとは思うものの、説得力というか必然性を感じつ程ではありませんでした。 その扱いは、背景というか、複数の演技に統一感を持たせてまとめ上げるための道具立てのよう。 スチームパンク風だったり戦間期モダン風だったりそういう世界観の代わりに、トピカルな題材を使うのも一つの試みとは思いますし、それなりに成功していたとは思います。 しかし、こういうノンフィクションに基づく舞台作品としてドキュメンタリ演劇があるわけですが、 そのような面白さがあったか、という程ではなく。 そもそもドキュメンタリーサーカスのようなものはあり得るものなのかと、そんな問題が頭を過りました。
そんなテーマはさておき、 トランポリンやティーターボード (シーソー) など縦方向の動的な動きも使ったアクロバットや、 エアリアルやシルホイールからなるパフォーマンスを楽しみました、 特に大きな透明のビニール袋に包まれた状態から始まる古着を結び繋げたかのようなティッシュのエアリアルは、最後を飾るに相応しかったでしょうか。
このようなプロダクションも悪くないのですが、 Cirkus Cirkör の近年のプロダクションというと、 Stockholm Konstsim Herr と Neptun Konstsim という2つのシンクロナイズドスイミングのチームとコラボレーションした2017年の Aquanauts [trailer] や、 スウェーデン Folkoperan (フォルクオペラ歌劇場) との共同制作で BAM 2018 Next Wave Festival にもラインナップされた Philip Glass のオペラ Satyagraha (2016年初演) [trailer] など、観たいものです。 もちろん、日本に呼ぶには予算的にかなり難しいプロダクションとは思いますが……。