国立映画アーカイブ (NFAJ) による、 戦前1910-30年代日本の映画ポスターの展覧会です。 国立映画アーカイブは約59,000点のポスターを所蔵しているとのことでですが、 そのうちの24点の複製を用いた展覧会です。 所蔵ポスターのデジタル化を進めているとのこと。 デジタル化されたポスターを印刷してたものが、 飲食も可能な1階ラウンジや階段踊場スター掲示スペースを使って、展示されていました。 オリジナルの紙の質感が失われつるっとはしてますが、 もともと複製されることが前提で作られたポスターですし、 スキャナやプリンタの性能向上はそのイメージを楽しむには十分なレベルです。 他の企画と連動していなかったこともあると思いますが、 むしろ、展示されていた24枚の選択の方向性がはっきり感じられな買ったことの方が気になりました。
ポスターよりも、同時に展示されていた、震災後の復興時に建てられた モダンなデザインの映画館 (バラック建築の映画館を含む) の写真資料 (こちらもデジタル化された写真をディスプレイでスライドショーしていた) の方が興味深く見れました。 吉川 清作 設計で内装や緞帳を 村山 和義 が手がけたことで有名な 葵館 だけでなく、 浅草や新宿の主要な映画館の様子も伺えるもので、これだけまとまって観るのは初めて。 現在のシネコンはもちろん、自分が体験してきた20世紀後半の映画館とも異なり、 無声映画時代の当時のはスクリーン前にオーケストラピットがあり、 スクリーン前は長椅子 (背もたれも無い場合も多い) が並ぶ平土間席で、 後方や二階に一人ずつ背もたれや肘掛けが付く席が階段状に並ぶという、 歌劇場 (オペラハウス) をお手本にした作りだったことが伺えたのが、とても興味深く感じました。 浅草オペラや歌舞伎の劇場の転用だったり併用だったりするものも少なくなく、 映画館と劇場の分化が進んでいない時代だったのだな、と。
展示専用のギャラリーを会場とせずデジタル複製を用いた小規模な展示ということ、あまり期待していなかったのですが、意外と楽しめました。 今回は、国立映画アーカイブ開館記念ということで、特に他の展覧会と連動したような企画ではありませんでした。 しかし、戦間期日本モダン文化の展覧会が開催されているときに、その企画に合わせた選択で、 会場の美術館の併設カフェ・レストランや売店などのスペースを使って、 このようなデジタル複製のポスターや写真を展示するというのは、良さそうです。 そんなデジタル複製の活用の可能性を感じさせる展覧会でした。