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Review: 『イン・ア・ゲームスケープ — ヴィデオ・ゲームの風景、リアリティ、物語、自我』 @ NTTインターコミュニケーションセンター (展覧会)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/03/03
In a Gamescape: Landscape, Reality, Storytelling and Identity in Video Games
NTTインターコミュニケーションセンター
2018/12/15-2019/3/10 (月休;月祝開,翌火休;2/11休,2/12開), 11:00-18:00.
出品作家: COLL.EO, Joseph DeLappe, Harun Farocki, Giant Sparrow, Ip Yuk-Yiu, JODI, Abdullah Karam & Causa Creations, Playables (Michael Frei & Mario von Rickenbach), Playdead, Lucas Pope, 谷口 暁彦, Jonathan Vinel, 和田 淳, Brent Watanabe, 山内 祥太.
共同キュレーション: 土居 伸彰, 谷口 暁彦.

PCや家庭用ゲーム機 (video game console) で遊ぶヴィデオ・ゲームを、 インディ・ゲームとヴィデオ・ゲーム・アートという2つの動向から捉えた展覧会です。 日本国内に絞ることなく、広く世界の動向を紹介するような内容でした。

インディ・ゲームは個人もしくは小規模チームで製作されたゲームのことで (インディとは独立系という意味)、 小規模ならではの作家性の強い、狭い意味でのエンターティンメントに留まらない作品が取り上げられていました。 中でも、戦争や難民などの社会問題を扱うゲームと、アニメーションの分野で「アート・アニメーション」に相当するゲームが目に付きました。 一方のヴィデオ・ゲーム・アートとは「ヴィデオ・ゲームというメディアを批評的な視座から俯瞰するメタメディアとしてのアート表現」とのことですが、 ゲームを想定された遊び方とは違う使い方をすることで批評的な視点を表出している作品が目にとまりました。

殺伐とした社会を舞台とした FPS (First Person Shooting) / TPS (Third Person Shooting) ゲームは 戦争や犯罪などの社会問題との親和性が高いのか、この展覧会の中では特に目立っていました。 米陸軍の作成したオンラインFPSゲーム America's Army 上で チャットのメッセージでイラクでの米軍の死者に関する情報を重ねていくパフォーマンス作品 Joseph DeLappe: dead-in-iraq (2006-2011) など、現実のレイヤにゲームのレイヤを重ねるARゲームとは逆の、ゲームのレイヤに現実のレイヤを重ねるような興味深さはありました。 しかし、そもそもほとんどゲームをしたことがないためベースとなるリテラシー不足は否めず、その表現の面白さは掴みかねました。

むしろ、PlayablesPlug & Play (2015) や Kids (2017-2019)、 和田 淳 『マイエクセサイズ』 (2017-2019) などのアート・アニメーション作家がらみのゲームは、インタラクティヴなアート・アニメーションのよう。 得点などの目標の設定が緩い、もしくは、そもそも無いところも、シュールさというか不条理さを倍加させていて、良かったです。 自分に比較的馴染みのある表現のせいか、自然に楽しむことができました。

意外だったのは、VR (Virtual Reality, 仮想現実) ゴーグルの廉価化で普及し始めているVRゲームについては 山内 祥太 の作品のみで (体験はできませんでしたが)、 スマートフォンの普及と Ingress や Pokémon GO のようなゲームの登場で一躍メジャーとなったAR (Augmented Reality, 拡張現実) ゲームが見当たらなかったこと。 このような企画に大きくフィーチャーされるほどにはジャンルとして成熟していない、ということでしょうか。

常設展示相当の 『オープン・スペース2018 イン・トランジション』 は流し観た程度。 新進アーティスト紹介コーナー ermergencies!平瀬 ミキ 『半透明な物体』 はそこはかとなく既視感もあって強い独自性を感じたわけではないですが、 シンプルなアイデアと造形の面白さをミニマリスティックに映像化した作品が気に入りました。

『イン・ア・ゲームスケープ』展の前に、 アンスティチュ・フランセ東京の主催するアートとデジタルカルチャーのフェスティバル Digital Choc のアンスティチュ・フランセ東京の展覧会に寄ったのですが、 こちらもヴィデオ・ゲームの展示、それもVR/ARゲームの展示でした。 Julia Spears et Ferdinand Dervieux の作品はVRゲームで、 イサム・ノグチの彫刻に着想した2人で遊ぶ Playgrounds と 1人で体験する物語風ゲーム Recall。 Julie Stephen Chheng はタヌキ探しのARゲーム Uramado, le réveil des TanukisRecallUramado, le réveil des Tanukis を体験しましたが、 どちらも、得点などの目標の設定が無い、もしくは、重要でないゲームで、 ゲームとしての面白さというより、類型的な2D/3D CGではなく作家性の高い「絵」を楽しむ インタラクティヴな「アート・アニメーション」としてのインディ・ゲームと言えるもの。 意図したわけではないのですが、In a Gamescape を補うような展覧会を観たことになりました。

同会場で開催していた Digital Choc 関連イベント Contemporary Computer Music Concert 2019 は、第一部のみ。 そのあと NTTインターコミュニケーションセンターへ移動してしまったので、雰囲気に触れる程度でした。 NTTインターコミュニケーションセンターの後、 Digital Choc の東京スカイビュー会場の展覧会を観ようと六本木ヒルズまで行ったのですが、 スカイビューまで40分待ちという表示を見て断念しました。 週末晩の六本木ヒルズの混雑を甘く見ていました……。