ラグジュアリー・ブランドのアイデンティティ・デザインを日用品に適用するなど、 既存のプロダクトやデザイン等の文脈をずらす作風で知られるアメリカの現代美術作家による 2016年ニューヨークの The Noguchi Museum 制作の 「宇宙開発時代」の茶会をテーマにした展覧会の巡回です。 NASAのロゴの入った宇宙開発や航空機に関係する廃材などを駆使して作った茶室と庭園のインスタレーション、 および、The Noguchi Museum での茶会の様子を捉えた映像の上映からなります。 展覧会初日に Tom Sachs 自身による茶会が開催されていました。 自分が行った時もちょうど茶会が終わった所のようで、時々茶会を開催しているようでした。
伝統的に茶室というのは廃材などを使い質素に作ることが多く、 その流儀を「宇宙開発時代」に移せば、宇宙開発の現場な航空機のハイテク廃材で作ることになるという納得感もありました。 その一方で、素材の鮮やかな色も残ったハイテク廃材は、茶道の美意識に繋がるような古び方、朽ち方ではないため、 おおよそ別物になってしまっているよう。 これは侘び寂びではなくキッチュじゃないかという感が、納得感と攻めぎ合うような展覧会でした。
NTTコミュニケーション・センターでは企画展をやっていなかったので、この年間常設展のみ。 最も印象に残った作品は、後藤 映則 の 『ENERGY #01』 (2017)。 人の動きのキャプチャからメッシュ状の構造を作り、それにスリット状の光を動かしながら当てることにより、光のシルエットの動きとして浮かび上がらせる立体作品です。 シンプルに視覚的に美しさ動きの面白さを作りだしているところが気に入りました。
梅田 宏明 『kinesis #3 - dissolving field』 (2019) は 光の粒を埋め尽くすように投影した小部屋で、人の動きをセンシングして、それに応じて光の粒の流れを生じさせるインタラクティヴなインスタレーション。 振付家・ダンサーらしい身体性を意識させる作品です。 しかし観客の動きではたかが知れていて確かにこう動くよねと確認できる程度なので、 身体能力の高いダンサーやサーカスアーティストに動かさせると面白そうです。
NTTインターコミュニケーション・センターの新進アーティスト紹介コーナー「emergencies!」での展覧会です。 最近、スマートフォン等の電子機器で読むことを前提とした 「縦スクロール漫画」が一般的になりつつあり、 従来の本・雑誌ベースの漫画とは異なるマンガ文法、コマ割り、ストーリーテリング手法が 話題となっています。 この作品は、縦スクロールに限らない、タブレット等の電子機器で読むことを想定したフレーミング、パンニング、ズーミングなどを駆使したストーリーテリングを試みた作品でした。 そうしてまでも語りたい物語がある程ではなく、 原画と実際の作品を対比させるなど、手法の試行、手法に対するメタな視線という面が強く、 そこがアート作品らしくもあり、少々物足りなく感じました。