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Review: Sue Healey: ON VIEW: Panorama @ 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/02/03
スー・ヒーリー 『ON VIEW:Panorama』
横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
2019/02/02 15:00-16:15
振付・演出・映像 [Choreography, Direction]: Sue Healey.
出演 [Performance]: 浅井 信好 [Asai Nobuyoshi], 湯浅 永麻 [Yuasa Ema] (Japan); Joseph Lee, Mui Cheuk-yin (Hong Kong); Nalina Wait, Benjamin Hancock (Australia).
委嘱製作: 愛知県芸術劇場, Freespace West Kowloon Cultural District (Hong Kong); 共同製作: 横浜赤レンガ倉庫1号館 (公益財団法人横浜市芸術文化振興財団).
World Premiere.

オーストラリア・シドニーを拠点に活動する振付家・映像作家・インスタレーション作家の Sue Healey が 2013年から続けてているシリーズ On View は、 主にコンテンポラリーダンスの文脈で活動しているダンサーを題材に、 映像作品や映像を交えたインスタレーション、時にはパフォーマンスを加えた ポートレート (肖像画) とするような作品です。 Yokohama Dance Collection 2020 のオープニング・プログラムとして上演された ON VIEW: Panorama は、 そのシリーズ中の1作品として、オーストラリア、日本、香港の男女2名ずつを取り上げ、城崎国際アートセンターで制作されたものです。

開場すると、まずはインスタレーションの鑑賞ということで、10分ほど映像のプロジェクションやポートレイトが描かれたガラスの衝立を絡めてのパフォーマンスを歩きながら観て回り、 その後に、客席に着いて約1時間の上演を観ます。 舞台には4面のスクリーンが並び、城崎や横浜で撮られたとおぼしき、ダンサーの映像を上映しつつつ、ダンスが上演されます。 複数のダンサーの絡みが無い訳ではなのですが、相乗効果を生んでいるというより、併置してコントラストと生じさせるような使い方でした。 後半近くになると、ポートレートが書かれたガラスの衝立のシルエットを使った演出や、 スモークに半透明スクリーンに多重的、多層的に映像を投影するなど、視覚的な効果の面白い演出も楽しめました。

映像、インスタレーションとダンスによる「クロスディシプリナリー」な作品という謳いでしたが、 現代アートのインスタレーションのような舞台美術やプロジェクションマッピングのような映像投影を駆使したダンス作品や、 歩きながらビデオインスタレーションの前でのパフォーマンスを観て回るというような演出は少なからず観たことがあり、 その手法自体というより、立体的に物語ったり幻惑的なイメージを作っていく使い方ではなく、多面的なダンサーのポートレイトを構成していく使い方に興味を引かれました。 といっても、プロモーションに使えそうと思うほど映像の完成度が高がったせいか、そちらが主と感じられがち。 映像とライブのダンスで個々のダンサーを見せつつ、映像、照明や音楽による演出で統一感を持たせた ガラ、というかショーケース公演を観たようでした。 これで、推したくなるようなダンサーに出会えたら良かったのですが、全体の構造の方に意識が行きがちで、個々のポートレートについての印象が薄くなってしまいました。