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Review: Phoebe Waller-Bridge: Fleabag 『フリーバッグ』 @ Wyndham's Theatre (演劇 / event cinema)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/03/16
Wyndham's Theatre, London, 2019-09-12.
Written and performed by Phoebe Waller-Bridge. Directed by Vicky Jones.
Presented by DryWrite, Soho Theatre and Annapurna Theatre
First Performance: the Big Belly Underbelly, 1 August 2013, Edinburgh Fringe 2013.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2020-03-15 13:00-15:40 JST.

Fleabag は Edinburgh Fringe 2013 で Fringe First Award を受賞して話題作となった Phoebe Waller-Bridge による女性一人芝居のコメディ作品の、 2019年ロンドンでの公演を収録したものを Natinal Theatre Live で観てきました。 2013年にBBCが全6回のTVコメディ・ドラマ化され数多くの賞を受賞、 2019年にTVコメディ・ドラマの第2シリーズが作られています。 と言っても、TVコメディ・ドラマや演じている Pheobe Waller-Bridge などについて予備知識もありませんでした。 普段、イベント・シネマで観るのは Royal Opera House や Metropolitan Opera のオペラ、バレエなどが中心で、 一人芝居をイベント・シネマで観るという経験はどういうものか、という興味もあって観てきました。

小さな舞台の上に、3 m四方程度の低い台とその中央にアームレストの無いシンプルな椅子が一脚。 ほぼ、その狭い舞台の上だけで演じました。 映像プロジェクションなどは用いず、照明演出若干の明暗の変化はあれど、色や明度を大きく変えることもなく、 音響演出も時々録音と思しき声や効果音も使う程度で、会話の相手も声色を変えて演じました。 服を変えるようなこともせず、マイムやダンスのようなフィジカルな演技も控えめ。 手振りや表情は豊かに、椅子への座り方やその脇での立ち方、歩き回り方などの姿勢、仕草と、 語りだけという、ある意味絵でミニマリスティックな演出の一人芝居でした。

主人公の Fleabag は Guinea pig-themed café (モルモット・カフェ) を経営していた女性。 店の家賃が払えなくなり、仕事を求めて採用面接に臨に失敗する場面から始まり、 回想として語るのではなく、その場面をそのまま描くように、カフェの最後の日々を演じていきます。 その話はあけっぴろげな下ネタ中心の話が中心で、字幕の助けもあったと思いますが、笑える場面も多くありました。 しかし、むしろ、その語りの中の様々なエピソード、例えば、 共同経営者だった Boo の死、関係があまりうまくいっていない姉や父、 縒りを戻しても続かず別れてしまう元恋人 Harry、Harry がいない間の男漁り、 そして、何より、下ネタばかりの語りということ自体が、 次第に焦点を結び始め、焦点を結んだ瞬間に、最初の採用面接の場面に戻る、という 物語の話の運び方の巧みさにすっかり引き込まれてしまいました。

正直に言えば、表現のスタイルという点でもテーマという点でも、普段、接点があまり無いもので、 語る言葉が無いという感もあったのですが、 ユーモアと物語の話の運び方の巧みさを期待以上に楽しむことができました。 小劇場やライブハウスのような場所のような会場で雰囲気込みで楽しみたい作風でしたが、 語りが中心だっただけに字幕の見やすいという点ではイベントシネマにも合っていたかもしれません。 ただ、今回、観た映画館は場違いに大きなスクリーンで、 ミニシアターでの上映の方が雰囲気に合っていたかもしれないと思ってしまいました。