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Review: Anne Teresa De Keersmaeker / Rosas: En Atendant @ Cloître des Celestins, Festival d'Avignon 2010 (ダンス / streaming); Anne Teresa De Keersmaeker, Björn Schmelzer / Rosas & graindelavoix: Cesena @ Cour d'honneur du Palais des papes, Festival d'Avignon 2011 (ダンス / streaming)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/04/26

ベルギーを拠点に活動するコンテンポラリーダンスのカンパニー Rosas がCOVID-19 対策で自己隔離している人々のために Open streaming during the lockdown と題して 期間限定でストリーミングをしています (4/30までの予定)。 そんな中で、2010年、2011年と Festival d'Avignon で上演した 「ダンスと古楽 Ars Subtilior の出会い」2連作を、4月19日、20日の2晩を使って観てみました。 Ars Substilior は、14世紀フランスのパリとアヴィニョンを中心に Ars Nova が技巧化する形で生まれたということで、 アヴィニョンで初演上演する作品の音楽として Ars Subtilior を選んだと思われます。

Anne Teresa De Keersmaeker / Rosas
Cloître des Celestins, Avignon.
July 2010.
Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker
Created with and danced by: Boštjan Antončič, Carlos Garbin, Cynthia Loemij, Mark Lorimer, Mikael Marklund, Chrysa Parkinson, Sandy Williams, Sue-Yeon Youn
Musicians: Michael Schmid (flute); Ensemble Cour & Coeur: Bert Coen (music director, recorders), Birgit Goris (fiddle), Poline Renou (voice).
Music: 1) Istvan Matuz: ...L(ÉLEK)ZEM..’; 2) Filippo da Caserta: En Atendant, souffrir m’estuet (ballade); 3) Bart Coen: Estampie En Atendant 2; 4) Johannes Ciconia: Sus un’ Fontayne (virelai); 5) anonymous: Je prens d’amour noriture (virelai); 6) anonymous: Esperance, ki en mon coeur.
Scenography: Michel François; Costumes: Anne-Catherine Kunz; Musicological advisor: Felicia Bockstael; Sound: Alex Fostier
Production: Rosas
Co-production: De Munt / La Monnaie (Brussels), Festival Grec (Barcelona), Grand Théâtre de Luxembourg, Théâtre de la Ville (Paris), Festival d’Avignon, Concertgebouw Brugge
World Première: Festival d'Avignon, Cloître des Célestins, 9 July 2010.
Réalisation: Olivia Rochette & Gerard-Jan Cleas.
Vimeo URL: https://vimeo.com/31419993

公演の様子を説明的に撮ったものではなく、アップの多用など映像作品化を前提に収録しています。 相向かい合うカメラアングルが使われているのにも関わらずカメラが写り込んでいないように見えるので、ワンテイクではないかもしれません。

アヴィニョンのセレスティン修道院の回廊という趣のある場所を舞台に、モノクロで撮影されています。 終演時には夕闇の中でほとんど見えなくなるよう日没時に合わせて上演されていて、画面も次第に暗くなっていきます。 ダンサーの捉え方は、バストアップして足元を映さなかったり、踊っている人ではなくそれを脇で観ているダンサーにクロースアップしたり、そもそも、フレームアウトしてしまう事も多くて、 全体としてダンサーたちがどのような位置関係、フォーメーションと取っているのかとか、動きの流れがどうなっているのか、とかは掴みづらく感じました。 映像作品としてはスタイリッシュで雰囲気は良いのですが、ダンス作品としての面白さ (音楽構造をどうダンス化していたのか) がわかるような映像ではありませんでした。

最初の10分はサーキュラーブリージングやマルチフォニック、ゆっくりとしたポルタメントという特殊奏法を駆使した flute の現代の作曲によるソロを、 flute を吹く奏者の頭部のアップで見せるという出だし。 Ars Substilior ですがポリフォニーではなく、リコーダーとフィドルを伴奏に女声のソロで歌われていました。 抽象的なダンス作品で音楽が重要な役割を演じているとは思いますが、演奏者はほぼ伴奏でダンスに絡むということはありませんでした。

Anne Teresa De Keersmaeker, Björn Schmelzer / Rosas & graindelavoix
Cour d'honneur du Palais des papes, Avignon.
July 2011.
Concept: Anne Teresa De Keersmaeker, Björn Schmelzer; Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker; Musical director: Björn Schmelzer.
Created with and danced by Rosas and graindelavoix: Olalla Alemán, Haider Al Timimi, Boštjan Antončič, Aron Blom, Carlos Garbin, Marie Goudot, Lieven Gouwy, David Hernandez, Matej Kejzar, Mikael Marklund, Tomàs Maxé, Julien Monty, Chrysa Parkinson, Marius Peterson, Michael Pomero, Albert Riera, Gabriel Schenker, Yves Van Handenhove, Sandy Williams.
Music: Ars Subtilior: 1) anonyme (Codex Chantilly): Pictagore per dogmata / O Terra supplica / Rosa vernans 2) Philippot de Caserta (Codex Chantilly): Espoir dont tu m’as fayt partir 3) Solage (Codex Chantilly): Corps femenin 4) Solage (Codex Chantilly): Fumeux fume 5) Philippot de Caserta (Codex Chantilly): Par les bons Gedeon et Sanson 6) anonyme (Ms Toulouse): Kyrie 7) anonyme (Codex Chantilly): Inter densas / Imbribuis irriguis 8) Galiot / Giangaleazzo Visconti (?) (Codex Chantilly): En attendant d’amer 9) Johannes Ciconia (Codex Mancini): Le ray au soleyl 10) Jean Hanelle (Codex Torino J.II .9): Hodie puer nascitur/Homo mortalis firmiter
Scenography: Ann Veronica Janssens; Costumes: Anne-Catherine Kunz; Sound: Vanessa Court, Alexandre Fostier, Juliette Wion;
Production: Rosas
Coproduction: La Monnaie/De Munt (Brussels), Festival d’Avignon, Théâtre de la Ville (Paris), Les Théâtres de la Ville de Luxembourg, Festival Oude Muziek Utrecht, Guimarães 2012, Steirischer Herbst (Graz), deSingel (Antwerp), Concertgebouw Brugge
World Première: Cour d'honneur du Palais des papes, Festival d'Avignon, 16 July 2011.
Réalisation: Olivia Rochette & Gerard-Jan Cleas.
Vimeo URL: https://vimeo.com/43636892

翌年は Festival d'Avignon のメインステージ、教皇庁の中庭の公演を捉えたものです。 こちらの音楽も Ars Subtilior ですが楽器伴奏なしのポリフォニー、 Björn Schmelzer 率いるベルギーの古楽声楽アンサンブル graindelavoix とのコラボレーションで、 ほとんど一緒に混じりあって、ダンサーも歌い、歌手も踊ってます。 さすがに、主要なパートはそれぞれが歌い、踊るわけですが、分かりやすい役割分担や衣装等の区別がないので、渾然一体感があります。

En Atendant は夕暮れでしたが、こちらは明け方の曙の中。 朝4:30開演で、最初のうちは、夜明け前の暗がりの中で彩度の低い衣装で上演していて、色彩感がほとんど感じられません。 しかし、次第に日が出てきて、明るくなっていきます。 最後はすっかり明るくなり、赤いシャツなど彩度の高い衣装を着ているダンサーもいて、色彩感がいつの間にか豊かになっているという、視覚的な変化も面白く感じました。

Cesena は客席最上段あたりから俯瞰するように撮った図もあって、 フィールド中央に描かれた円とそれに絡めた動きなど、全体の様子もわかりやすくなっていました。 Rosas らしいとは思いましたが、Ars Subtilior という音楽に疎いせいか、音楽との関係はよくわかりませんでした。 En Atendant より分かり易いとはいえ、 クローズアップ、特に、上半身だけのショットが多用されていました。 ステロタイプに説明的な画面作りを避けているといるのだろうとは思うのですが、 ダンスは足元が重要だと思うんだけに、全身を捉えて欲しいと思いながら観ていました。

Rosas | En Atendant [Festival d'Avignon 2010] from Olivia Rochette Gerard-Jan Claes on Vimeo.

Rosas | Cesena - Festival d'Avignon 2011 from Olivia Rochette Gerard-Jan Claes on Vimeo.