インターネットの一般普及最初期の1996年に結成された 千房 けん輔 と 赤岩 やえ によるメディアアートのユニット エキソニモの四半世紀の活動を辿る個展です。 NTT ICC での展覧会などでその作品を観たことはありますが、個展でまとめて観るのははじめてです。 パーソナルコンピュータ (PC) やインターネットを使って動きのある、時にインタラクティヴな作品を多く手掛けてきているユニットです。 インターネット上の情報を使った社会的なテーマを持ったインスタレーション作品を見ると、 こんな作品ではなく素直に統計や可視化の技術を使ったインフォグラフィックスでのプレゼンテーションに取り組んだ方がいいのではないか、と思うことが少なくありません。 最近の “The Kiss” (2019) や “UN-DEAD-LINK 2020” (2020) のような作品には感傷も少々感じてしましたが、 エキソニモの作品は、インターネット上の情報というよりもむしろノイズ成分に着目し、 それを表現へ落とし込む際の扱いにも若干の破壊衝動含みの醒めたユーモアあり、 そこにインフォグラフィックスなどでは掬えない表現を感じることができました。
例年正月を挟む会期で開催されている新進作家に焦点を当てるアニュアルのグループ展ですが、今回は約半年繰り上げしての開催です。 中で気になった作品について個別にコメント。
飛び上がった瞬間を浮遊するかのようにとらえた『本日の浮遊』シリーズ (2011-) で知られる 原 久路 & 林ナツミ は2014年に別府を拠点を移してから制作しているという少女たちを被写体とした演出写真のシリーズ。 被写体となっている少女たちのアイデアを生かしているとのことで、少女の類型的なイメージを覆すといった方向性はないけれども、 明るい色合いの画面でいきいきとした瞬間を魅力的に捉えています。 『本日の浮遊』シリーズも、単に浮き上がっているような瞬間の面白さだけでなく、その画面の色合いも魅力だったのかもしれない、と、気付いたりもしました。
岩根 愛はハワイ日系移民と福島県の関係をテーマとした作品の予定が、 新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で人に見られることがなくなった東北の桜の作品がメインとなっていました。 入口側から見て夜の闇の中人気がなくライトアップで浮かび上がる桜も美しいのですが、 振り返って見るとその裏側にブレて不明瞭ながら祭の衣装などを着た人影が映り込んでいるというのが、幻想的に感じられました。
今回観た2つの展覧会の両方で、HDTVのディスプレイを縦長に使ったアスペクト比9:16の動画が使われていました。 スマートフォン普及の影響として以前から薄々気付いていましたが、 異なる2つの展覧会で続けて見て、美術の文脈でも9:16の縦長画面が動画の標準的なアスペクト比の一つになったと実感しました。