新型コロナウイルス流行第4波をうけ東京都に緊急事態宣言が出て、 4月25日から5月11日まで都内の公立美術館の臨時休館。 連休中に行こう思っていた展覧会が急に24日が最終日となってしまったので、急遽観に行きました。
正直に言えば山岳写真、自然写真と言われるような写真のジャンルには疎いのですが、世界的に著名な写真家とのことで観てみました。 いわゆる「絶景」の写真ではあるのですが、キャプションに書かれている撮影の経緯の話を読みつつ観ると、 撮影許可を得て現地に入るまでに十数年がかりのような秘境の絶景が多く、撮影に至るまでの熱量も写真に込められているよう。 朝焼け夕焼けの非日常的な色彩で非日常的な自然造形を捉えた写真に圧倒されつつも、 葛飾北斎が江戸時代末期に朝焼けの赤富士や空撮的な視点で捉えた黒富士の浮世絵でやったことというのは、 こういうことだったのだろうな、などと思ったりもしました。
現代美術の文脈で活動する 澤田 知子 の新旧シリーズ作品を集めての個展です。 国際美術展、現代美術の企画グループ展で観る機会はありましたが、個展でまとめて観るのは初めて。 白川 義員 の山岳写真の色彩造形に圧倒された後では、現代アート文脈ならではのコンセプト先行の写真の造形的な地味さは否めないのですが、 コンセプトの良さもあって興味深く観られました。
いわゆるセルフポートレートによる演出写真ですが、 証明写真のような形式を使い類型的で没個性的ともとられそうな人物のポートレートを撮りつつも、 髪型や化粧によるヴァリエーションでシリーズとして数十点、多いもので300点もの写真を並置することで、 抑えきれない個々の個性が浮かび上がってくるかのような作品です。 ただ、タイポロジーの写真のように街中で取材したものではなく その個性自体が作家自身が演じたものであるという所に、作家の意図が入り過ぎているように感じられてしまいます。 その点、HEINZのケチャップ/マスタードのパッケージの多言語バージョンを並べた『Sign』の (これも製品として実際に売られているものではなく、作家が編集したものではないですが) さりげなさの方が、個性が滲み出る感じが出るように感じられました。
B1Fでは 『日本写真家協会創立70周年記念 日本の現代写真1985-2015』。 現代美術の文脈で観ることの多い写真家の写真も、 報道写真、広告写真、自然写真など様々な文脈で制作された写真が 撮影年代だけのシンプルな分類でフラットに展示されていました。 年代によって浮かび上がるものがあったという程ではありませんでしたが、 ジャンル別に展示されたものを観ることが多いので、新鮮。 変にジャンルを選ばず、時にはその意識を外して観ることの重要性に気づかされました。