日本のブレイクダンサーによって2011年に結成されたチーム Kinetic Art の公演です。 ほとんどバックグラウンドを知らなかったのですが、 ストリートダンスやサーカスの文脈で国際的に活動し、 36e Festival Mondial du Cirque de Demain (2015) [YouTube] で Prix ARTE を受賞するなどの評価も得ているということで、観る良い機会と足を運びました。 アフターパフォーマンス・トークの話によると、今回の作品のアイデアは 演出・振付・出演の2名のうちフランス・アヌシー在住の 野沢 直子 が主導して、 杉本 峻 とはオンラインを駆使したコラボレーションで作りあげたよう。 音楽も生演奏を予定していたのですがCOVID-19パンデミックで叶わず、特別に録音された音源を使いました。
フライヤーに使われている写真のように、輪になった長い (10mはあったでしょうか) ロープを使い、 遅めの動きのブレイクダンスというかコントーション、アクロバットがかった動きで四肢身体を使って「あやとり」をするように見せるというのがラストの見せ場です。 しかし、それまでの展開も時間的、空間的によく構成された約60分でした。 ロープと途中でエアリアルのベルトを使う程度で装置も最低限、ブラックボックスに白の照明のみというミニマリスティックな演出です。 ロープは最初のうちから使いますが、最初は一本の紐のように畳んで引き合ったり、床に線を引くかのように使ったり。 動きも最初のうちはアクロバット控えめで、 はじめに近い場面では、この作品のテーマを提示するかのように、 人間関係のすれ違いを演出するかのように、線状に引かれたローブを挟んで歩いたり。 次第にブレイクダンス、コントーションなどの技を使ったソロ、デュオを交えて展開していきます。
ロープで描く線で正方形を描くなど、空間使いは奥行き方向もよく考えられていました。 ブレイクダンスやコントーションなど床に近い動きが多くなってしまいがちなわけですが、 途中にエアリアル・ストラップ (さすがに本格的なエアリアル・アクロバットではありませんでしたが) を交えることで、 下がった2本の白いストラップで縦方向の空間を視覚化し縦方向の動きも加えていたのも、良かったでしょうか。 そんな抽象的ながら空間的な構成も巧みな中に、ラストの「アヤトリ」のパフォーマンスで、 ロープによる造形の面白さ、ロープの絡み具合などの偶然的な要素が加わってくるところも面白く感じられました。