新国立劇場オペラ芸術監督の大野 和士の企画による、 発声機能を持ち歌うことができるアンドロイド「オルタ3」をフィーチャーした 「大人から子どもまで楽しめる」オペラです。 2020年8月に上演予定されていたものが1年延期で上演されました。 台本 は 島田 雅彦、作曲 は 渋谷 慶一郎。 というより、オペラ、舞踊 (バレエ)、演劇の新国立劇場三部門 連携企画ということで、 新国立劇場バレエ団のダンサーも出演しており、 三部門連携がどう結実するのか、ダンスがどのように使われるのか、という興味もあって足を運びました。
全知全能のAI「マザー」に支配された管理社会の下で、 学校卒業時に異端とされ開拓地へ送られたアキラと、 開拓地でアキラがメンテナス係を担当していてアキラの死後反乱を起こしたアンドロイド ゴーレム3、 アキラとは幼馴染みで反乱を起こしたゴーレム3の制圧に向かったAIドクター エリカの物語です。 AIという道具立てはあるものの、近未来的というより、異端を開拓地送りにするような管理社会の設定も20世紀的なディストピアを舞台とした、 いかにも「大人から子どもまで楽しめる」ジュブナイルSFな物語でした。 20世紀的な管理社会よりも、Big Techによる市場を介した支配のようなものにした方が近未来的というか21世紀的になったのではないかとは思いつつも、 素直にストレートプレイにしたら1970年代NHKの少年少女ドラマシリーズ風に楽しめそうな話だと思いながら観ていました。 しかし、そんな物語とオペラという形式との相性があまり良くなかったのか、さほどピンと来ないまま終わってしまいました。
ダンスをどう使うのか、という興味もあったのですが、 抽象的ながら格子構造もハッキリした舞台装置に、映像のプロジェクション、 そしてコーラスを舞台いっぱい並べることの多い演出の中で、 ダンスは埋もれがちに感じられてしまいました。 アンドロイド「オルタ3」の歌唱についても、 日本語なのでなんとか分かる程度で、歌詞も聞き取れるとは言い難く、 むしろ物語の世界に入ることを妨げる異化作用の方が強く感じられてしまいました。
今回は良かったという感じではなかったのですが、 三部門連携企画のような試みは単発で終わらせずに継続することで成果が出てくるものとも思うので、 今後も継続してほしいものです。