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Review: Ballett Zürich / Christian Spuck: Winterreise @ Opernhaus Zürich (バレエ / streaming)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2021/09/25
Opernhaus Zürich
12, 13 Februar 2021.
Ballett von Christian Spuck
Music von Hans Zender. Schuberts «Winterreise». Eine komponierte Interpretation.
Choreografie: Christian Spuck; Musikalische Leitung: Benjamin Schneider; Bühnenbild: Rufus Didwiszus; Kostüme: Emma Ryott; Lichtgestaltung: Martin Gebhardt; Dramaturgie: Christian Spuck, Michael Küster.
Ballett Zürich
Mauro Peter (tenor), Philharmonia Zürich.
Premiere: 13 Oktober 2018, Opernhaus Zürich.
TV-Regie: Michael Beyer
NHK ondemand URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021116003SA000/index.html

Wilhelm Müller の詩集に基づき Franz Schubert が1827年に作曲した連作歌曲集 Winterreise 『冬の旅』を、 Ballett Zürich が芸術監督 Christian Spuck の振付でバレエ化したものです。 Spuck の作風には疎かったのですが、『冬の旅』という題材と、スタイリッシュな舞台の様子を捉えたスチル写真に惹かれて、配信で観てみました。 しばらく前に ARTE Concert で配信されていて気になっていたのですが、 ジオブロックで観られず。NHK が持ってきてくれてありがたかったです。

装飾なしのコンクリート打ちっぱなしを思わせるムラのあるグレーのパネルで三方を囲まれ、 蛍光灯の青白い光のフラットな照明で、スポットライトや暗転などの演出は用いず。 そんな舞台の上での装飾と彩度を抑えた黒っぽい衣装というビジュアルがかなり好み。 どこか既視感があったのですが、1980-90s頃の Comme des Garçons のブティックでしょうか。

そんな舞台は現代的ですが、トゥシューズで踊る場面もあり動きはバレエのイデオムは強め。 「冬の旅」に出ることとなる失恋と傷心という状況を捨象して、旅先での孤独の不条理と死の寒々とした心象を視覚化したよう。 男女組んでのダンスや群舞は、傷心のような恋愛に関する状況をロマンチックに描写するものではなく、音楽を視覚化するよう。 不条理や死の心象風景は、むしろ、目隠しされたり、頭部や腕にカラスの剥製などの象徴的なオブジェを着けたり、枯れ枝の束を竹馬に乗ったりした姿で、 グループでポーズを取ったり静かに動いたりと、活人画に近いやり方で描いていきます。 グループでポーズを取った状態でセリを使って登場したり退場したりという演出は、静かな活人画的な情景の切り替えに効果的でした。

Winterreise はピアノ伴奏で歌われることが多いのですが、 今回は1993年に Ensemble Modern により初演された Hans Zender による オーケストラ編曲 (Eine komponierte Interpretation) 版が使われていました。 スチル写真のイメージは電子音を多用した現代的な舞台作品を思わせるものだったので、 現代的にリミックス (recomposed) されてそうとも思ったのですが、流石にそれはなし。 しかし、元の旋律も生かしつつも不協和音が多く加えられたその音は、殺伐とした舞台上のイメージに合っていました。