コンテンポラリーダンスの文脈でも活動するスウェーデンの振付家 Alexander Ekman が Ballet de l'Opéra national de Paris (パリ・オペラ座バレエ団) に振付た新作バレエです。 2018年に NHK BS プレミアムシアターでも放送されていて、 BelAir Classics の DVD/Blu-ray もリリースされていますが、 『パリ・オペラ座バレエ シネマ』の中の一作品として映画館上映されたので、大画面で観るのも良いだろうと観てきました。 コンテンポラリー演目の上映/上演を応援したい、というのもありますが。
音楽にはオーケストラは用いず、pop なものではないものの、 オープニングからして saxophone quartet だったり、gospel な歌だったりと、jazz のイデオムが強いもの。 オペラ座を遊び場にしたような作品とも言われますが、 前半は、白いスポーツウェアを思わせる衣装によるダンスに、 アポロ11号月面着陸時の宇宙飛行士のような宇宙服姿や、風船を被ったかのようなダンサー、 鹿のツノのように2対の枝をはやしたフェイスガード無しのアイスホッケー・ヘルメットを被った女性ダンサーたちの群舞。 宇宙服姿などその意図を掴み兼ねましたが、ナンセンスに近い不条理なのかもしれません。 前半ラスト、大量の緑のボールが降り注ぎ、舞台を埋め尽くし、ダンサーたちがそれに戯れます。
後半は、衣装は白のスポーツウェアからうって変わって暗いグレーのセミフォーマルに近いシンプルで落ち着いた服装になります。 オーケストラピットに落とした緑のボールの深みの中でザッザッと音を立てながら男性ダンサーたちが踊る場面、 ダンサーたちが灯ったキャンドルを持って静かな動き、 そして、前半までほとんど宙吊りだった一片1.5mはあろう30個近い白い箱を整然と並べてのその周りでのダンスなど。 後半の方が視覚的に美しくて、好みでした。 ラスト近く、主役級の男性ダンサーがグレーの服を脱ぐ場面で、再び前半の世界に戻るよう。 そして、一旦幕が降りた後のフィナーレは、客席にバルーンやボールを投げ入れてのサーカス風でした。
家でNHKオンデマンド (BS プレミアムシアター) で観た時は、前半のシュールな場面の意図を掴みかね、後半緊張が切れたか、ピンときませんでしが。 しかし、映画館で大画面で観ると、没入感もあってか、期待以上に楽しむことができました。 家で DVD/Blu-ray やストリーミングで観る手軽さや観られる作品の多さ (特に人気があまり無いコンテンポラリー作品) も良いのですが、 やはり、映画館での上映で観るのは良いものです。 もちろん、実際の上演で観られたら、それがベストなのですが……。